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メタルヘッド [映画感想−ま]

ジョセフ・ゴードン=レヴィットのロン毛&へなちょこタトゥー!
スチルのインパクトでそりゃあもう期待でいっぱいでした。
スペンサー・サッサー初監督作。


自動車事故で母親を失った13歳の少年TJ(デヴィン・ブロシュー)と、
その父親で妻の死から立ち直れず落ち込んだ日々を送るポール(レイン・ウィルソン)。
二人の前に、謎の男ヘッシャー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)が突然現れます。
この男は祖母(パイパー・ローリー)と三人暮らしだったTJの家に転がり込み、
あらゆる非常識な振る舞いを見せ、TJたちを困惑させます。
そんなある日、TJはスーパーのレジ係ニコール(ナタリー・ポートマン)と出会い・・・。


hesher_1.jpg


傷ついた父と息子の前に突如現れたメタル野郎ヘッシャー。
最初にヘッシャーがジャジャン!と登場するところや、
とりあえず破壊、放火、爆破というやりたい放題の乱暴ぶり、
TJがいじめに遭って、ここは助けてやってよという場面であっさりと裏切ってみたりとか、
前半のヘッシャーのまったく行動の読めないところはJGLびいきも手伝って面白いんですが、
これがあまり長続きしないで徐々にもたつき始め、
あちこちで面白くなりそうなのにあら?っとなり、
全体に、どこかツメの甘さのようなものを感じてしまいました。

結局ヘッシャーとはいったい何者なのか?キリストのような風貌にも見えて、
単純に救世主的な印象を与えもするのですが、最後までその正体はナゾのまま。
そのことをハッキリさせる気はそもそも無いのかもしれませんが、
これが逆に全体を曖昧にしているような気がしてならず、
いっそのこと救世主でも天使でも妖精でも心の中にいる誰かでもなんでもいいから、
つまりは何かの象徴としての存在であると匂わせるぐらいにでもしてくれたほうが、
話としてはスッキリするような気がしました。
私はヘッシャーがそういう”何か”であって欲しいという願望と期待とともに、
(それは物語の展開上のヒネリとしての期待という意味も含めて)観ていたので、
彼が終盤でニコールと"そういうこと"になってしまうところで心底ガッカリしてしまったのでした。
それはつまり、なんだ、普通にヤッちゃう奴なんじゃん!という、
ヘッシャーが特別な、聖人でもなんでもないということがハッキリした瞬間だったからです。


hesher_2.jpg


それから、このニコールという人の位置づけもちょっと曖昧な気がして、
何よりナタリー・ポートマンなんかが演じているものだから、
どうしても何かもっと重要な役なんじゃないかと考えてしまうのかも知れないのですが、
実際はTJがほんのちょっと想いを寄せる年上の女性ぐらいの役割でしかなく、
もし、彼女の存在に意味があるのなら、意味を持たせたかったのであれば単純に描き足りないし、
そうでないのなら、ナタリー・ポートマンではない役者に演じて欲しかったです。
そうでなければこのニコールの存在をもうちょっと深く、
父子と同列ぐらい丁寧に描いてくれても良かったと思います。
ニコールの悩みや痛みもそれなりに描かれてはいましたが、
ヘッシャーとの関わり合いはTJより少ないし、何より常にTJを挟んでの関係だったので、
だからヘッシャーとそうなってしまうのがあまりに唐突に思えてしまったのだと思います。
もちろんそうすることでTJに打撃を与えるわけだし、
ニコールにとってはそうなることが助けになったのだと解釈することも出来ますが。
まあ逆に考えれば、それほどの位置の役ではないからそうなってしまったとも言えるのかも知れない。
言動や服装など、十分にホワイトトラッシュな風味を出していて、
そこが素のナタリー・ポートマンとのギャップから来る面白味さもあるのですが、
それはキタナイJGLと同様、一見面白いんだけど成功しているかというと・・・という、
やはり、惜しいなあという結論になってしまいます。

それともう一点どうしても気になったのは、TJが父親が手放した車に固執するところ。
母親が死んだきっかけとなったことはわかるし、終盤で丁寧にそのシーンが描かれるわけですが、
母親を思い手放したくないものというのであれば、例えば服とかアクセサリーとか食器とか椅子とか、
もっと身近で母親の匂いが染みついたようなもののほうが自然な気がします。
親子三人の最後の楽しかった思い出というのはわかりますが、
母親がとても愛した車であるとか、事故の原因に何かあるのかとも思ったのですが、
特にそういうことでもないようで、私だったら逆にこの車は母親を奪ったものという、
むしろ憎い存在に思えるんじゃないかなと思うのですが。
ただこの車に関してはあらゆる話につながっていくものなので、
結局、車という仕掛けが欲しかっただけなのかなと思いました。


hesher_3.jpg


そういうわけで、ものすごく面白くなりそうなものをいっぱい持っていそうで、
そのどれもこれもが消化不良で終わった感じでした。
ヘッシャーという男は、見た目は十分にインパクトがありますが、
結局は特別な何かでもなんでもなく、単なるチンピラ浮浪者の域を出ていなくて、
けれど、そんななんでもない男であってもどん底にいた父と息子の前に現れたことで、
結果的にそのどん底な状況から救い出すきっかけになった。
そういう風に人は何かちょっとしたことで救われるもの、ということを言いたかったのかも知れません。
ただ、そういう言ってみればありふれた着地点になってしまったことには、
やはり何かしら物足りなさを感じてしまうし、オチとしてそこに行ってもいいから、
そこまでの道筋でもうちょっとこちらを驚かす仕掛けが欲しかったです。
見た目がアレな人がお年寄りには優しい、というのもまあありがちな描き方だし、
それもかまわないのですが・・・何よりヘッシャーとおばあちゃんのやりとりは、
涙が出そうなくらい楽しかったのですが、そのことが引き起こす結末と、
そこで見せるヘッシャーの素の顔にはちょっと残念な意外性でしかなくて、
えらく真っ当な話(と言ってもほぼ下ネタなのは笑えますが)で締めてくれるのは、
再生物語としては予想の範囲内で残念でした。

それでもTJを演じたデヴィン・ブロシュー君は素晴らしかった。
どうにもならない現実の重みを抱えた暗い表情は最初から最後まで物語を引っ張っていました。
ただただ落ち込んでいるお父さん役レイン・ウィルソンは、
もうひとつ見せ場が欲しいところでしたが、こういう役なんで仕方ないですね。
それとおばあちゃん!エンドロールで「パイパー・ローリー」という名前を観た時は、
思わず声を上げそうになりました。まったく気が付かなかった!
このことが一番この作品で驚かされたところだったかも知れません。


Hesher(2010 アメリカ)
監督 スペンサー・サッサー
出演 ジョセフ・ゴードン=レヴィット レイン・ウィルソン デヴィン・ブロシュー
   ナタリー・ポートマン パイパー・ローリー ジョン・キャロル・リンチ



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メアリー&マックス [映画感想−ま]

人形アニメと聞くと思わず「えっ何!?」と立ち上がってしまうほど、
この手のストップモーションアニメが大好きなので、
これもその存在を知った瞬間に必見!と思っていたわけですが、
これがまたどうして、なかなかに強力な作品でした。


メルボルン郊外に住む8歳の少女メアリーは、
仕事と趣味にばかり没頭している父親とアルコール依存症の母親との3人暮らし。
額にあるアザのせいで学校ではいじめに遭い、孤独な毎日を送っていた彼女は、
ある日ふとアメリカに住む誰かに手紙を出そうと思い立ち、
電話帳から変わった名前の人を探し出して手紙を送ります。
その相手はニューヨークに住む、人付き合いが苦手で、
同じく孤独な日々を送っていた44歳のマックス。
遠くオーストラリアから突然届いた一通の手紙に動揺しながらも、
彼はメアリーに返事を書きますが・・・。


ポンポン
maryandmax_1.jpg


観る前になんとなく情報が耳に入って来てはいたので、
これが単なるカワイイとかファンタジーとかいうような人形アニメでないことは、
最初から覚悟してはいたのですが、いやはやここまでとは考えていませんでした。
登場人物ほぼ全員が何かしら悩みや問題を抱えています。
それは身体的なものだったり精神的なものだったりいろいろなのですが、
そのせいもあってか、家族や友人に恵まれず孤独に暮らしている人ばかりです。
そんなストーリーの重さや人形たちのハッキリ言って可愛くはない、
どこかしらちょっとグロテスクですらある様子から、
最初から気楽に観ることを許さないようなダークさを感じてはいたのですが、
そうは言っても人形の仕草や表情、細密なセットの作りなど、
それらはダークではあっても愛らしさも十分持ち合わせていて、
その動作のひとつひとつを、最初のうちは楽しんで観ていたのですが、
かなり早い段階からこれが人形アニメであることはどうでもよくなっていって、
というか人形アニメであることも忘れてしまって、
その重いストーリーの中にどっぷりハマりこんでしまいました。

例えば『ウォレスとグルミット』のような作品だと、
コマ撮りの素晴らしさや楽しさ、キャラクターの愛らしさなどを常に意識し、
ストップモーションの出来栄えに驚嘆しながら観ている気がするのですが、
今作に関しては、そのストーリー自体に心が持っていかれてしまった感じです。
でもこの重さをもし生身の人間が演じていたとしたら、
もっとヘビーでいたたまれないものになっていたかも知れないし、
この作品を十分に"楽しめ"たのはやはり人形アニメだったからなのかもという気もします。


赤ちゃんはどこから?
maryandmax_2.jpg


額のアザ、いじめ、両親との関係など8歳の少女にとっては十分につらい現実の中、
それでもメアリーは明るく、前向きに生きています。
彼女が思いつきで始めた文通は遠い場所に暮らすマックスの生活も変えていきます。
アスペルガー症候群であるマックスは、そのことがもたらす悩みを抱えながらも、
それをきちんと受け止め、なんとかそれと付き合いながら都会の片隅で生きています。
二人は手紙のやり取りの中で、相手の文章に一喜一憂します。
特にマックスは、メアリーの8歳の少女らしい真っ直ぐな文章に喜び、驚き、
時にその驚きが彼を深く苦しめることもありますが、
それでもメアリーからの手紙を楽しみ、そして自分について語ります。
まったく見ず知らずの、遠い国に住む親子ほどに年の離れた二人が、
自分に出来る範囲で相手を思い、文章や贈り物を届け続けます。
そこに、人と人が付き合っていくことの楽しさや難しさがいくつも見えます。
メアリーは幼い子どもだし、マックスはアスペルガーという”病い”を抱えている。
そのことが、いわゆる普通の大人同士の付き合いとは違う、
ウソ偽りのない真っ直ぐな関係を育んでいきます。
おそらく今の自分がこういう関係を望んだとしても、
決して誰とも築くことが出来ないんじゃないかという寂しさを感じ、
二人がとても羨ましく思えました。

いろいろありながらも続いていく二人の文通。しかしマックスと違いメアリーは成長していきます。
年齢と共にさらに別の悩みも増え、しかし彼女は変わらず前向きに生きている。
やがて大学生となったメアリーは、マックスのためという"思い込み"である行動を取り、
その結果、マックスを深く傷つけてしまいます。
信頼しあっていた関係でも、ちょっとした気持ちのズレが取り返しのつかないことをしてしまう。
特にメアリーがとった行動は誰もが陥りやすい過ちで、だからこそメアリーの気持ちもわかるし、
そしてマックスの思いも、ここまで観て知った彼の様子から痛いほどわかってしまう。
そうなってしまった事実に本当に心が痛みます。


万引きダメ
maryandmax_3.jpg


そしてメアリーもおそらく初めてと言っていい、深い挫折を味わうことになります。
彼女はおそらく憎しみはなくとも"自分はこうはならない"と思っていたであろう、
自分の母親と同じようにお酒に溺れ始めます。
それがどんどん彼女を不幸に追いやり、やがて絶望の末に彼女がとる行動。
そこで流れる曲が『ケ・セラ・セラ』。
"なるようになる"という楽天的なこの歌が使われる皮肉さに、
胸が押しつぶされそうなくらいの痛みをおぼえ、また唐突に、
『17歳のカルテ』でスキーター・デイヴィスの『The End Of The World』が、
同様なシーンのバックで流れていたことを思い出しました。
こちらは『ケ・セラ・セラ』とは違い文字通り悲しい曲ではあるのですが、
いずれも絶望のシーンに流れる美しい音楽という意味では、
私にとってこんなに意地の悪い演出はありません。
このあたりから本格的に決壊した私の涙腺は、そのままエンディングまで溢れ続け、
それでもその結末はハッピーエンドとは言えないかもしれないけれど、
ずっと続いていた胸の痛みがそこで「ああよかった」という、
シンプルでホッとする、安堵のような不思議な感情に変わり、
この美しいエンディングをいつまでも抱きしめていたい気持ちでいっぱいでした。

病とか恵まれない境遇といったものは確かに不幸なことなのかも知れません。
けれどそれが不幸であるか否かは他人が勝手に決めることなのかも知れないし、
大事なのは本人がどう思ってるかであり、他人にはどうすることも出来ないし、
してはいけないことなのかもと思いました。
相手のために良かれと思ったことが必ず良い結果になるとは限らない。
また、これが一番自分を幸せにすると思ったことも意外にも違う結果に終わったりもする。
シミ取り手術が成功しても幸福は訪れず、粉々になったチョコレートの贈り物が心を温めたりする。
人との付き合い方、そして「人を愛するにはまず自分を愛せよ」という、
誰もが知っているようでうっかり忘れてしまっていることを、
メアリーとマックスが優しく優しく教えてくれました。


Mary and Max(2009 オーストラリア)
監督 アダム・エリオット
声の出演 トニ・コレット フィリップ・シーモア・ホフマン エリック・バナ
     バリー・ハンフリーズ ベタニー・ホイットモア



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ミックマック [映画感想−ま]

タイトルの『ミックマック』とはフランス語でイタズラとか企み、策略という意味なのだそうで、
その名の通り全編大ネタ小ネタ、ありとあらゆるイタズラ大会・・・と言っても、
イタズラなんて生易しいものじゃなく余裕で死人が出そうなアブナイものもたくさんあって、
かなりキケン、だけどファンタジー風味の復讐ドラマ・・・ってよくわかんないな。
要はジャン=ピエール・ジュネってことかなあと。


幼い頃、父親を地雷処理中の事故で失ったバジル(ダニー・ブーン)は、
ある発砲事件に巻き込まれ一命は取り留めますが、頭に銃弾が残ったままになってしまいます。
その事件のせいで家も仕事も失ってしまったバジルは、ある日、
廃品回収業を営むプラカール(ジャン=ピエール・マリエール)という男に誘われ、
同じように行き場を失った仲間たちの大勢住む彼の家に住まわせてもらうことになります。
そしてひょんなことからバジルは自分の頭に埋まった銃弾を製造している会社を見つけ、
さらにその向かいには自分の父親の命を奪った地雷製造会社が建っていることを知り・・・。


頭に埋まってます
micmacs_1.jpg


久しぶりのジャン=ピエール・ジュネ作品、上映館も少なく観ようかどうか迷う・・・というか、
観る機会はちょっとないかも、と思っていたらぽっかり時間が出来て急遽鑑賞、
そのためジュネ作品を観る体勢が整ってなくて、この独特のノリに慣れるのに時間がかかってしまいました。
冒頭のバジルの父親の亡くなる様子やバジルが銃撃戦にまきこまれるあたり、
ホームレスとなったバジルのあれこれはテンポも良くワクワクもしていたのですが、
プラカールに誘われ新しい"家族"が出来てからは、その家族の面々の個性の強さがあまりに味が濃くて、
"これ面白いでしょ?でしょ?"と次々繰り出され念を押される感じがいかにもなジュネ節というか、
いかにもなフレンチギャグの応酬にしばらくはちょっと引いてしまっていました。
彼らの廃品からあらゆるモノを作り出す様子や1人1人の特殊能力などとにかく押しが強く、
これ以上やられるとちょっとイヤかも知れないと思ってしまったり。

『アメリ』にはそれなりにハマッた私ですが、あれが苦手という人も多かったのを思い出し、
ああきっとこういう押しの強さがダメなところなんじゃないかな、なんてことも途中考えてしまいました。
『アメリ』はオドレイ・トトゥの可愛さや小物のキュートさに誤魔化されて、
なんだかカワイイ映画みたいに思われていたけれど、
結構キワドイ表現やさりげなく下品だったりするようなところもたくさんあって、
その程良い毒加減こそが面白いところだと思ったのですが、
今作もそういう部分がたくさん登場するところはまったく同じで、
それがアメリ1人だったのに比べ今回は大人数でかかってきちゃうから、
ちょっとお腹いっぱいというか、微妙に舌に絡んだり口の中に残る感じを受けたのかも知れません。


作戦決行中
micmacs_2.jpg


それに今作でのバジルたちの目的は復讐であり、その標的の巨大さは、
どう考えても個人レベルの復讐では済まないだろうと思われるシリアスなものだし、
だからこそ全編"イタズラ"で押し通す平和さが微笑ましく頼もしくもあるのでしょうが、
それでいいのかなあという思いも最後まで拭えず、これはもう自分のアタマの固さなのかも知れません。
まあそもそも武器製造会社が向かい合って普通に建ってるという設定、
バカみたいなセキュリティの甘さとかお気楽さを最初に受け入れてしまえば、
そういうファンタジーな話なんだしやってることはまるっきり子どものイタズラレベルなんだと、
あとはその世界に黙って身を委ねてしまえば良いのかも知れませんが。

それにしても敵2人をいがみ合わせ破滅させるのかと思えば、
最終的に鉄槌を下すことになるのがアレというのはわからなくもないけど、
あれだけ手作りで頑張ってきて最後アレ頼りというのはちょっとありがちというのか、
ここまでのヒネリっぷりを最後にもうちょっとガツンと見せて欲しかったかなあとも思いました。
もちろんその前に敵2人をああいう方法で追い込ませる、
"想像"させて追い詰めるということこそがキモであったのはよくわかってるし面白いとは思いましたが。

戦争被害を受けた子どもたちの写真をチラリと出してしまう唐突さも、
バジルたちの"演出"としてサラッと流していいところなのかも知れませんが、
そのチラ見せにこそジュネの本気さがあるように感じられて、
(実際、ジュネの武器商人たちへのリアルな怒りが製作動機らしいし)
ここまでの大イタズラ大会をファンタジーじゃなく本気の反戦映画にするようで、
もちろんそれでも全然いいのですが、いよいよ自分の立ち向かい方を一瞬見失う気がしてしまいました。


吹っ飛ばしますよ
micmacs_3.jpg


とまあ文句ばかり言ってるようですが、それでも思い出すあれこれにイヤな思いはまったく無くて、
家でのんびりお酒飲んでとろーんとしながら観たらすごく幸せな気持ちになるような気もして、
こういう、監督の色がものすごく濃く出たものというのは、それを心から楽しむ、
すべて身を委ねる体勢を取ってから観るのが正しいのだろうなとすごく実感させられました。
色づかいや構図や、とにかく映像はどこもここも完璧に作り込まれていて、
そのこだわりぶりはさすがとしか言いようがありません。
ジュネと言えばのドミニク・ピノンがすっかり年とってしまってましたが、
あのしゃくれ具合は健在だしいよいよ味のあるオジサンになっていたのが嬉しかった。しかも人間大砲!
強烈に個性的で味わい深い面々、彼らの特殊部隊ぶりが、
自分がもしすべてを失い、彼らのファミリーに入れてもらえることになっても、
何も取り柄がないからきっとダメだな、と軽く妄想するぐらいにはしっかりハマリました。
1人で生きていくことの大変さ、人と力を合わせて生きていくことの幸せ、
でもそのためには人のためになること、自分も何か役に立たないといけないんだな、
なんてことを一瞬本気で考えたりもしました。
個人レベルの幸せを追求する上でのひとつのカタチとしての反戦、ということでもあるのかな。
ほんわかしてそうでかなり高度なところからのヒネリ方は、
子どもじみたイタズラをいっぱい見せつつ実はすごくクレバーな感じという、
フランス映画の頭の良さみたいなものを久しぶりに見せつけられた気がしました。


Micmacs à Tire-Larigot(2009 フランス)
監督 ジャン=ピエール・ジュネ
出演 ダニー・ブーン アンドレ・デュソリエ ニコラ・マリエ ジャン=ピエール・マリエール
   ヨランド・モロー ジュリー・フェリエ オマール・シー ドミニク・ピノン
   ミシェル・クレマド マリー=ジュリー・ポー



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マイ・ブラザー [映画感想−ま]

この作品のオリジナルであるデンマーク映画『ある愛の風景』は未見。
なのでほとんど予備知識無く観ることが出来ました。
覚悟はしていたのですが、思った以上に重たい作品でした。


米軍大尉のサム(トニー・マグワイア)は、アフガニスタンへ出征する前日、
銀行強盗で服役していた弟のトミー(ジェイク・ジレンホール)の出所を出迎えます。
サムの妻グレース(ナタリー・ポートマン)と2人の娘は、
このトミーのことを良く思っていませんでしたが、彼を家へ招きます。
そしてサムは戦地へ。しかし間もなくサムの訃報が届きます。
悲しみに暮れるグレースたちのために、トミーは心を入れ替え彼女たちを支え始めます。
そんな彼にグレースや娘たちは少しずつ心を開いていきます。
しかしそこへ、サムを救出したという連絡が入り・・・。


兄弟
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夫を亡くし、その寂しさを埋めるように夫の弟と関係してしまい、
そこに死んだと思っていた夫が帰って来て・・・というような、
そんなよくありがちな話を想像していたら、これはもっともっと悲惨な話でした。
戦地でサムに何があったのか。それは宣伝文句にあるような、
世界の果てを見た、なんていうそんな甘いものではなく、
彼ははっきりと"地獄"を体験するのです。
繰り返される拷問、そしてそれ以上にサムを精神的に痛めつけたであろう、
彼に迫られた最悪の選択。

そしてサムはなんとか生き延びて帰って来ますが、当然ながらサムは元のサムではない。
確かに生きて帰って来たけれど、魂の抜け落ちたような、幽霊のようなサムに、
グレースも娘たちもどう接してよいかわからない。
そのことが一層サムの心を凍りつかせ、家庭の中に居場所を見出せなくなってしまいます。

私はもちろんこれほどの生きるか死ぬかの体験はしたことがないし、
これからもまずないと思いますが、自分ならそうまでして生きたいと思うかというと、
サッサと楽になりたくて、自分から進んで死を選ぶんじゃないかと思いました。
そこまでして彼が生きようと思ったのは何故なのか。
それは愛する家族の元へ帰るため?確かにそれもあるとは思います。
しかしおそらくは純粋に死への恐怖、その一点だと思います。
そのことでサムをもちろん誰も責めることは出来ません。
サムを責めるのは誰よりサム自身なのです。


戸惑い
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原題は『Brothers』なので、サムとトミーの描かれ方はもう少し同等であって欲しかったですが、
トミーに関しては多少物足りなさを感じてしまいました。
銀行強盗による服役から出所したばかり、
父親(サム・シェパード)からも拒絶されるほどの"出来損ない"の弟は、
それでもサムを失ったグレースたちのために何かと力になろうと努めます。
グレースはそんなトミーに徐々に心を開き、揚げ句、一線を越えそうになりますが、
そこへ至る感情の動き、そしてサム帰還後の態度などに今ひとつ説得力がないというか、
もう少しトミーの視点にも時間や表現を割いて欲しかったです。
一線は、いっそのこと越えてしまったほうが逆に全員が割り切れてしまえたのかもしれない。
しかしそうならなかったことは周りからは信用されず、
当人たちは一瞬でもそんな感情を持ってしまったことを悔やみ続ける。
ここでトミーとグレースはもっと葛藤し、そんな2人の態度に一層サムは苦しめられ、
そのサムの様子にさらにトミーとグレースは心を痛めるはずで、
しかしそのあたりの表現はもうひとつ弱かったと思いました。

けれどそれはあまりにもサムの状況のほうが過酷過ぎだからとも言えます。
役作りのために10Kgも減量したというトビー・マグワイア。
この作品はほとんど彼の演技、彼の痩せ細った背中や、
虚ろな瞳を観るためのものと言ってもいいかも知れません。
個人的にトビー・マグワイアは実はこんな風な"心ここにあらず"という芝居が元々得意というか、
内に狂気を秘めているとか、柔らかく言えばどこか浮世離れしているような役の方が、
『スパイダーマン』のピーター・パーカーなんかより合っていると思っていたので、
やっとこういう方向に帰って来てくれた気がして、ものすごく嬉しく思いました。


通じ合えない
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元チアリーダー、彼女に会うと誰もが「美人だ」と言うグレース。
ナタリー・ポートマンはもちろん美しい妻としてこれ以上ないのですが、
ちょっと美しすぎ、垢抜けすぎている気がしました。
だいたい、トビー・マグワイアとナタリー・ポートマンが2人の子を持つ親の役だなんて!
いえ、年齢的にも十分そんな役をやっていいのですが、
どうもまだ子どもの頃の顔が見えてしょうがなかったです。
サム・シェパードの頑固親父ぶりはすごく良かった。
まあ私はサム・シェパードに関してはいつでも点は甘いのですが。
しかしすっかりおじいさんになったなあ。

それより誰より、何より驚異的だったのは2人の娘役を演じた子役、
特にお姉ちゃんのイザベル役の子は本当に本当にスゴイ!
自然に子どもらしい表情をカメラが捉えてるわけではなく、ちゃんと"自然な演技"をしているです。
変わってしまった父親にどう接したらいいのかわからない。
大好きになった叔父さんが離れていってしまう寂しさ、
その感情をどう押さえつけたらいいのかわからない。
10歳ぐらいの子どもがそんな状況をどう想像し演じるのか、それこそ想像出来ません。
演技の上手い子役という域を出ている、彼女の演技もまた必見です。


Brothers(2009 アメリカ)
監督 ジム・シェリダン
出演 トビー・マグワイア ジェイク・ジレンホール ナタリー・ポートマン
   サム・シェパード クリフトン・コリンズ・Jr. メア・ウィニンガム
   ベイリー・マディソン テイラー・ギア キャリー・マリガン



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マイレージ、マイライフ [映画感想−ま]

人付き合いを厭わない人にはなんてことないことでも、それを苦手としていたり、
あえて避けて生きていきたい者にとっては、日々の生活は生きづらく、すべてが戦い。
でも、自分は本当に人が苦手なのか、嫌いなのか。
本当は誰かのぬくもりが欲しいのではないか。
求めて拒まれることが怖いだけではないのか・・・なんてことを、
ラストのジョージ・クルーニーの表情のあと、ずっと考えていました。


雇い主に代わってリストラ対象者に解雇通告を出す、それがライアン(ジョージ・クルーニー)の仕事。
そのため彼は年間322日全米を飛び回る、独身の気ままな生活を送っていました。
しかしそんな彼の生活に変化をもたらす、2つの出会いが訪れます。
1つは、出張先でのアレックス(ヴェラ・ファーミガ)というビジネスウーマンとの出会い。
そしてもう1つは入社したばかりの新入社員ナタリー(アナ・ケンドリック)。
ナタリーは、現地に赴くことなくネットを通じて解雇通告を出すという新しいシステムを提案。
経費削減のためボスのクレイグ(ジェイソン・ベイトマン)はそれを導入しようとしますが、
それが採用されればライアンの出張生活は終わりになってしまいます。
ライアンは必死に新システム導入に反対。しかしクレイグはライアンにナタリーの教育係を任命。
出張に彼女を連れて行くことになり・・・。


新人
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会社勤めをしている人なら、こういう話はどこかしら身につまされたり、
人ごとではないと思う人も多いのではないかと思います。
それにしてもいきなり「すぐに荷物をまとめて帰ってください」なんて言われるものなんですね。
そして、こんなリストラ請負人なんていう仕事があるとは。
まったく知らないヨソ者がやって来て、クビを告げられるというのは驚きです。
確かに言い渡す人のことを考えれば、同じ会社の人のクビを切る仕事というのは確かに荷が重いでしょう。
でも、言われるほうの身になってみれば、宣告されるそのこと自体あんまりな話なのに、
それをどこの誰だかわからないヤツに言われるなんて。
私なら、そんな会社こちらから辞めてやる!と言いそうですが・・・。

そんな仕事を実に淡々とこなすライアン。
人との接点を出来る限り持たないで生きている彼にとって、これはなかなか向いている仕事のよう。
けれど、新人のナタリーが提案した新システムを彼は受け入れようとしません。
それは、そのアイデアが採用されれば彼の生活そのものと言える「出張」がなくなってしまう。
一つの場所に留まらされる暮らしなど、もう何年もしていないし、
常に機上の人となって雲の上にいることが彼の日常であったのに、そうではなくなってしまう。
もちろん、せっせと貯めていたマイレージも貯められなくなってしまう!
そんな自分の日常が脅かされると思ったのでしょう。


家族
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彼はナタリーを出張に連れて行き、その”現場”を彼女に見せ、体験させます。
そこで何が起こるのか、呼び出された社員がどのように部屋に入って来てどんな風に座り、
どこを見つめ、何を語るのか、そしてどうやって部屋を出て行くのか。
人々のそんなひとつひとつのこと、その場に流れる空気を彼女に感じさせます。
そうすることで何とか彼女に新システムを思い留まらせようとしたのでしょう。
そしてそこで彼女はいくつかのミスを犯してしまうのですが、
ライアンは彼女を慰め、その尻ぬぐいをするうちに、彼も何かを感じ始めます。
彼はおそらく自分でも自覚のないまま、実際に相手と向き合うことの大切さ、
それらをすべて受け止め、どう"対処"していくかの大切さを感じていたのだと思います。
人と深く接することがないからこそ、かえって相手の立場や心情がわかるのかも知れない。
人と人が関わり合うことの複雑さを感じてしまいました。

さらにライアンの平和だった日常が侵される事態に直面します。
まずアレックスという、まるで自分の分身のような存在に出会う。
考え方や価値観が驚くほど似ていて、だから一緒にいてとても居心地がいい。
彼にとって、そんな存在に出会ったのは初めてのことだったのかも知れません。
そしてもうひとつ、これまで避けてきた家族との接点を持たなくてはならなくなる。
妹の結婚のために、彼は日頃とはかなり違う"説得"をするハメに合います。
しかしそれは、彼自身の家族に対する考え方を大きく変えさせてしまいます。
そして同時にその場にいたアレックスに対する思いも変わってくる。
これまで意識的に避けてきたことを求めようとします。


恋人?
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そしてライアンはこれまでの生き方を改め、愛を求めるようになる・・・と、
普通ならなりそうなところですが、そう簡単にはいきません。
ライアンがやっと信じられるように思えた人の温もり、
ずっと避けてきたものが信じられそうに思えた時に、彼が取った行動とその結果。
そして、欲しくてしょうがなかった1,000万マイルを手にする時、
映画の始まりの頃の、自信に満ちた、自分しか信じないライアンはすでにいなくなっている。
若い時ならば、こんな経験も勉強だとか成長だとか納得して前に進めるかも知れません。
けれど、彼のような年齢になってこんな風に考え方を変えさせられるというのは、
かなりキツイことだと思います。
その戸惑いの表情、本当にジョージ・クルーニーが上手い!
この人は本当に、いつでも何の役でもジョージ・クルーニーそのままのようで、
でも、どれもこれもうまく役になりきってるんですよね。

ヴェラ・ファーミガとアナ・ケンドリックも、オスカーノミネート納得の好演でした。
特にアナ・ケンドリックは、こういうお勉強が出来てやる気満々で・・・な女の子、
いるいる!すっごく知ってる!と、観てる間ずっと思ってました。
典型的現代のネット世代の子で、ドライかと思えば素直に愛を信じていたりもして、
傷ついてボロボロになったりとか、本当に可愛く愛らしかったです。
ほかにもライトマン監督作の常連ジェイソン・ベイトマンとJ・K・シモンズ、
特にJ・K・シモンズはほんのちょっとの登場なんですが、さすがの存在感。
あと、ダニー・マクブライドがいいですよ〜!

『サンキュー・スモーキング』『JUNO/ジュノ』そして今作。
ジェイソン・ライトマンはこれまで傑作しか撮っていない。
彼の作品は、人が生きていく上で経験する苦い思いを描き、
そして人の温かさも忘れない。けれど安易なハッピーエンドにもしない。
でも決して冷たく突き放すようなこともなくて、すごく細かい、
人と人の触れ合う時の空気のようなものを感じさせてくれる気がします。
若いのにどうしてこんな視点が持てるのだろう。驚くばかりです。


Up in the Air(2009 アメリカ)
監督 ジェイソン・ライトマン
出演 ジョージ・クルーニー ヴェラ・ファーミガ アナ・ケンドリック
   ジェイソン・ベイトマン エイミー・モートン メラニー・リンスキー
   J・K・シモンズ サム・エリオット ダニー・マクブライド



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