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SUPER8/スーパーエイト [映画感想−さ]

見事なまでのスピルバーグオマージュぶりで、誰がどう見てもそのルック、
一般市民が地球外生物と思われるものと遭遇するというストーリー、
舞台となるのが70年代末のアメリカ郊外であることなど、
どうしたって『未知との遭遇』や『E.T.』を思わせるし、
スピルバーグがプロデューサーだからといってここまであからさまってどうなの?
と思う向きもかなりあるみたいで、そこを素直に受け入れ楽しめるか、
鼻についてどうにも乗り切らないでしまうかで相当評価は分かれているようです。
私はあまり小難しいことは考えず意識もせず、素直に楽しめました。


1979年アメリカ。
オハイオ州にあるリリアンという小さい街に住む14歳のジョー(ジョエル・コートニー)は、
工場での不幸な事故で母親を亡くし、父親(カイル・チャンドラー)と二人遺されてしまいます。
その事故から4ヶ月経った夏休み。ジョーは親友のチャールズ(ライリー・グリフィス)らと、
8ミリカメラでゾンビ映画の撮影を行っていました。
いつもの仲間5人での自主映画製作でしたが、脚本の手直しをしていた"監督"のチャールズは、
突然、同級生のアリス(エル・ファニング)を出演者として誘ったことを告げ、ジョーは動揺します。
撮影の日。真夜中の駅に集まったジョーら5人とアリスは順調に撮影を進めていましたが、
突然、彼らの目の前で貨物列車と1台のトラックが衝突。大惨事となります。
そこで彼らはあることを目撃し・・・。


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10年ほど前に『エデンより彼方に』という作品がありました。
これはダグラス・サークの『天はすべて許し給う』を元に作られたもので、
監督のトッド・ヘインズはストーリーだけでなく、意図して構図や色調、
音楽の使い方からタイトル文字に至るまで完全にサークの世界を再現して製作したものでした。
私はこの作品を観た時、なぜこんなものを作ったのだろう?と、
ちょっと否定的な感想を持ってしまったのですが、それはサークの世界を完璧に再現することによって、
なんとなくヘンなパロディ作品のようにも思えてしまい、役者たちが熱演すればするほど、
美しい風景が描かれれば描かれるほど、かえってなんとなく趣味が悪いような、
どうにも居心地の悪い感じを受けてしまったのでした。
しかしこれはオスカー候補になったりと評価も高く、絶賛している人もたくさんいて、
こういうのは自分の理解できないところなのか、私ももちろんこれが駄作だとは思いませんでしたが、
好きか嫌いかで言えばどうしても好きになれなかったのでした。

『スーパーエイト』を観たあと、いろんな人の意見を読んでその意見の分かれかたに、
ふとこの『エデンより彼方に』のことを思い出したのでした。
今作も、作られた意味や実際に出来上がったもののクオリティを考えると、
それだけで大歓迎し感動し感謝すらしてしまう人もいれば、逆に最後まで、
上っ面だけ似せた中身のないものと思い、醒めた目で観てしまった人も多かったようで、
そんな風に意見が分かれてしまうのはとてもよくわかる気がするのです。
作品の出来としてどうこうより、こういうのは結局好きか嫌いかでしかないのかも知れないし、
その意味で言えば私は今回、この作品は"大好き"でした。


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"Super 8"とはコダックが製造販売していた8ミリフィルムのこと。
ジョーたちが映画製作に用いるこのフィルムの名前がタイトルとなっていることから、
今作で監督が描きたかったのは、ジョーたちの周りで起こる奇怪な事件の顛末ではなく、
少年たちが映画製作を進めて行く中で育んでいく恋や友情、
家族の意味や在り方といったことだったのではないかと思いました。
謎の生物の正体が何であるかとか、地球人対宇宙人の戦いとかいったものではなく、
その謎の生物とそれをめぐるアメリカ軍の軍事機密がどうこういうようなことも、
実際二の次、ワキの話であって、メインテーマは少年たちの友情、初恋、複雑な家庭環境、
親や周囲の大人たちとの関わり、そして何より映画作りといった、
おそらくJ・J・エイブラムスはじめ今作の製作に関わった人々に共通する、
自分たちの少年時代の思い出や思いをこそ描きたかったんではないかと思います。

ジョーたちが目撃するものは殺人事件や死体、謎の財宝でも奥深い洞窟でもなんでもよくて、
けれどもJJとしてはスピルバーグオマージュとしてやはりE.T.を登場させたかったのかもだし、
ジョーズやジュラシック・パークのように無抵抗な人々が襲われる様子も描きたかったのかも知れません。
"それ"は凶暴で、しかし人間と心を通わせることも出来る存在であって欲しかったんだと思います。
その結果、どれもこれもがいつかどこかで観たようなものになってしまい、
うわべだけスピルバーグ風にしてしまったような印象を与え、確かに深みに欠けるところがあるのは否めず、
もう少しストーリーや人物描写を掘り下げて描いて欲しかった気もしますし、
そんなスピルバーグ風なものを作ることにどんな意味が?と思うと、
そこに何の価値も感銘も受けなければ本作は途端につまらないものに思えてしまうのかも知れません。
それはこういう方向でこういう作品を作ってしまった以上、どうしようもないことだと思います。


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J・J・エイブラムスはこれまで『M:i:III』『スタートレック』の監督を務め、
いずれもメジャー作品のリメイクという雇われ仕事のようなものばかりをやって来て、
ようやくオリジナル作品を作れることになったら、
スピルバーグをトレースしたようなものを作ってしまうというのは、
結局オリジナリティのない人なんじゃないかとか、小手先だけの人だとか思われそうで、
(・・・まあ実際そうなのかも知れませんが!)だけど前2作はオリジナルのあるものでありながら、
それぞれ新たなスタイルや、かなり斬新な世界観も見せてくれていたと思うのです。
そんな彼だから、もっと何かやってくれるんじゃないかと、
やればできる子だろう!と、どうしても信じたい気持ちがあるのです。
今作が作られることになったいきさつはインタビューなどで語られていますが、
スピルバーグ本人が参加することであらゆることが許され、やりやすくなった反面、
彼に対する遠慮や逆にやりにくい部分もあったと思えるし、そういう意味では、
次回はもっと自由に、よりオリジナリティのある作品を作って欲しいと思います。

主人公ジョーを演じたジョエル・コートニー君がとにかくカワイイ!
彼が何度となく涙が溢れそうになり瞳がうるうるする様子にこちらもうるうる。
彼とチャールズ役のライリー・グリフィス君(この子もカワイイ!)はいずれもこれがデビュー作。
少年グループの構成員をデブ、チビ、メガネ、と定型パターンで揃えて来たのも王道で正解。
そしてそんな男子とはさすがに格の違いを見せつけていたのがエル・ファニング。
この年頃は男の子より女の子のほうがちょっと大人びていて、
少年たちの中でもそんなちょっとお姉さん的な雰囲気をとてもよく出していました。
それにしてもこんな可愛い子がどアップで迫って来たら(しかもゾンビメイクで!)、
ジョーでなくても誰でも恋しちゃいます。


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最後の最後、エンドロールのお楽しみも素晴らしく、
映画内映画でこんなに完成されたものもちょっと珍しいかも知れません。
実はこれを一番やりたかったのかも知れないと思うくらい。
いろんな不満点や物足りなさが多いことも含めて、あそこはああかもとかアレはなんだったんだとか、
見終わっていろいろ人と話し合いたくなることもたくさん。
JJお得意の隠しキャラやお楽しみもいっぱいあって、ファンとしてはそれも楽しい!)
私は観ている間とにかく楽しくて、出来ることならこのままずーっとやっててくれないかなあと、
この少年たちが登場し、映画製作を続ける連続ドラマを夢想してしまったほどでした。



Super 8(2011 アメリカ)
監督 J・J・エイブラムス
出演 ジョエル・コートニー カイル・チャンドラー エル・ファニング
   ライリー・グリフィス ライアン・リー ガブリエル・バッソ
   ザック・ミルズ ロン・エルダード グリン・ターマン ノア・エメリッヒ 
   ブルース・グリーンウッド グレッグ・グランバーグ



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幸せの始まりは [映画感想−さ]

ポール・ラッドとオーウェン・ウィルソンの共演というのは、
これまで何度もあったような気がしたのですが、
実はこれが初めてと言ってもよいのですよ!(誰に言ってるのだ?)
最近だと『ナイトミュージアム』にどちらも出演しているのですが、
当然、あんな役なので同じシーンでの登場はまったくナシ。
この二人の共演、それだけで個人的に無条件に大傑作間違いなし!
しかもそれが正式にロードショー公開されるなんて!


ソフトボール選手のリサ(リース・ウィザースプーン)は、
ある日ジョージ(ポール・ラッド)という男からの電話を受けます。
恋人のいないリサにチーム仲間がジョージを紹介しようとしたのですが、
ジョージの電話は「自分には恋人がいるのでつきあえない」というもの。
そんな奇妙な電話は気にも留めず、リサはメジャー・リーガーのマティ(オーウェン・ウィルソン)
とデートをし意気投合、一夜を共にします。
一方ジョージは、父チャールズ(ジャック・ニコルソン)とともに経営する会社の、
不法行為疑惑で収監されるかも知れないという事態に陥り、
同時に恋人も突然彼の元を去ってしまいます。
落ち込むジョージはアシスタントのアニー(キャスリン・ハーン)のアドバイスで、
気分を変えるために再びリサに電話をかけ、デートの約束をします。
しかしその頃リサは、突然チームからの解雇を知ったばかりでした。
互いに最悪な状況の中、リサとジョージはレストランで待ち合わせますが・・・。


思いは通じない
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ジェームズ・L・ブルックスの監督作品を観るのは『恋愛小説家』以来ですが、
そもそも監督作としてはこの後にアダム・サンドラー主演の、
『スパングリッシュ 太陽の国から来たママのこと』が一本あっただけなようで、
(残念ながら未見)本当におひさしぶりな感じです。
その演出ぶり、そしてキャストいずれもが期待どおりというのか、
予想を裏切らない、いい意味で思った通りの、
それぞれ俳優たちそのままの最良の面を見せてくれている作品に仕上がっていました。

観る前に、唯一この作品に乗れないなあと思ったのは、
リース・ウィザースプーン・・・決してキライな女優さんではないのですが、
最近はあまり積極的に観たいと思うことのない人でした。
予告編の段階では、二人の男性に翻弄されるヒロインなんだったら、
もうちょっとキャラの弱目な可愛い感じの女優がいいような気がしたし、
すでにオスカー女優となった彼女では強すぎるイメージも勝手に持ってしまっていました。
ところが観てみると、強さと弱さ、ロマンチストだったり現実的だったりと、
実にいろんな豊かな表情を見せ、小麦色に焼けた肌とキュッと引き締まったふくらはぎが、
まさにプロスポーツ選手らしくてとても良いのです。
元々彼女を念頭に書かれた役だということなので、監督が主人公をどう描こうとしたのか、
そこは揺るぎなかったのだと思うし、私が観る前に決定的に勘違いしていたのは、
これはリサという女性が主人公だということ、男二人(と怖いオジサン)は、
あくまでも脇役だということ、ここをしっかり理解していれば良かった。
(でも、あの予告編は鑑賞後の今観ればなるほどと思うのですが、
何度観てもピンと来ない、ボンヤリした印象のものだったのです!と強調しておこう。)


思いは届かない
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では”ワキ”の男性二人はどうだったのかというと、
これがまたいい意味でチカラが入っていないというか、
それぞれの持ち味を最大限活かしたキャラクターでファンとしては大満足!
特にオーウェン・ウィルソン演じるマティは、
彼がこれまで何度も演じてきた得意な天然キャラクター。
物事を深く考えたりしないし、自分の思うようにしか行動しない。
自分に正直である人の愛おしさと付き合いづらさ、
相手を愛してる気持ちに間違いはないんだけど、その言動を見ていると、
結局一番愛してるのは自分なんじゃないかと思ってしまうし、
こういう人を愛することは本当に難しいと思わせます。
けれど、最初はたくさんいるガールフレンドの一人でしかなかったリサに、
何か違うものを感じ、彼なりに彼女を深く愛するようになる。
その微妙に変わっていく心の動きが、とてもさりげなく自然だし、
でも、やれやれまったく・・・とこちらが心配になるぐらい相変わらず天然。
彼の演技力と、もちろん演出の巧さもあるのだと思いますが、
本当にこれまたアテガキしたとしか思えない、納得の演技でした。

ポール・ラッド演じるジョージもとても魅力的に描かれています。
自分の置かれている立場、父親に対する気持ちは常に揺れ続けていて、
そんなどん底な状況で出会ったからこそリサに強力に惹かれてしまう。
自分の気持ちになかなか気付いてくれないリサに、
決して無理せず自分らしくアプローチします。・・・かなりジタバタしますが。
マティと正反対と言える、相手を深く思いやる心の持ち主で、
これまたもうちょっとガツンと行ってもいいんじゃないの?と応援したくなります。
ポール・ラッドの困り顔と無邪気な、だけどちょっと影のある笑顔はやはり良い。
シリアスに笑わせるという、この手のコメディ演技は本当にお手のものという感じです。


思いは通わない
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ただ、ストーリー的に惜しいと思う点もいくつか。
ジョージと父チャールズの危機感がちょっと理解しづらかった。
こういった状況に私の知識がついていけないだけかも知れませんが、
確かに自分が収監されるというピンチな状況はわかるんですが、
それが単純にジョージを落ち込ませているだけだし、もちろんそれで十分なのですが、
もう少しリサとの関係や、もっと言うとリサのキャリアの問題にまでうまく絡んだりして、
それぞれの問題が意外な繋がりで解決する・・・とかいうのをちょっと期待してしまったのですが、
まあそれはこちらの勝手な思い込み、方向が違うのでしょう。
おそらくチャールズの、というよりジャック・ニコルソンの存在があまりにも大きくて、
浮いてしまってるように見えてしまったのだと思います。
ニコルソンは『愛と追憶の日々』や『恋愛小説家』などブルックス監督作にたびたび出演しているので、
今回もメインキャストというよりは友情出演的意味合いが強いんじゃないかと想像するのですが、
でもそれだったらもうちょっと出番が少なくてもいい気がするし、
そのほうが逆にインパクトがあって、役柄としての存在感も出たような気がします。

チャールズのシーンで一番"おおっ!"と思ったのは、
ジョージのアシスタントのアニーの出産後に登場するところ、
ここはおそらく全員"ええっ!?"と思わされる爆笑シーンなんですが、
こういうのがもうちょっとあると良かったのに。そんなところが惜しい気がしました。
それにしてもこのアニーの病院でのシーンはとにかく素晴らしすぎます。
劇場内でもそこらじゅうで泣き笑いが起こっていましたが、
こういうメインキャラ以外にスポットライトを当て、
それが主人公たちの心に大きく影響を与えるエピソードというのは、
観ているこちら側もリサたちと同じ体験をし、同じ気持ちを味わえるし、
登場人物の感情にすんなり同期できる気がして、ああこういうところ本当に巧いなあと思いました。

原題の『How Do You Know』というのは"どうやってそれを知るのか?"
みたいなことかなあと思うのですが、登場人物それぞれが悩みを抱えていて、
互いの気持ちもわからないことばかりで、自分の思いも上手く伝えられない。
それぞれの思いや自分自身の心の内側に、いつ、どうやって気がつくのか、
そんなこんなが込められたタイトルなんじゃないかと思いました。
彼らが悩み抜いた末に気がつく瞬間、いままでよくわからないでいたものに気がつく瞬間、
それらが実にさりげなく、でも確実に描かれていて胸を打たれました。
人はそうやって互いを、そして自分自身を知り、次へと進んでいくのだろうな、
そんなことをたくさん気付かせてくれる、本当に幸せが観ているこちらにも始まりそうな、
実に素敵な、チャーミングな作品でした。



How Do You Know(2010 アメリカ)
監督 ジェームズ・L・ブルックス
出演 リース・ウィザースプーン ポール・ラッド オーウェン・ウィルソン
   ジャック・ニコルソン キャスリン・ハーン マーク・リン=ベイカー
   レニー・ヴェニート シェリー・コン



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ソーシャル・ネットワーク [映画感想−さ]

デヴィッド・フィンチャーは常に特異なストーリーと刺激的な映像で、
これまで魅力的な作品をいくつも作ってきました。
なので今作ではネット社会というまさに"今"なテーマを取り上げるのだから、
どれほど強力に刺激溢れる作品を作ったかと思ったら、
これが良い意味で何も起こらない、驚くほど静かに物語が進む、美しい作品でした。


2003年秋。ハーバード大学2年生のマーク・ザッカーバーグ(ジェシー・アイゼンバーグ)は、
ガールフレンドのエリカ(ルーニー・マーラ)と口論になりケンカ別れしてしまいます。
マークはその腹いせに自分のブログに彼女の悪口を書き、さらに思いつきで、
親友のエドゥアルド・サベリン(アンドリュー・ガーフィールド)の協力を得て、
女子学生の格付けサイト「フェイスマッシュ」を立ち上げます。
あっという間にサイトは話題になり2万を超えるアクセス数となりますが、
大学のコンピュータシステムをハッキングしていたことが問題になり、あっさり閉鎖に。
しかし、そのハッキング能力はエリート学生ウィンクルボス兄弟(アーミー・ハマー)と、
その友人ディヴィヤ・ナレンドラ(マックス・ミンゲラ)の目に止まり、
マークは彼らからハーバード大生専用のコミュニティサイトを作ることを持ちかけられます。
しかしマークはこの依頼に応えず、これをヒントにエドゥアルドと共に、
ソーシャル・ネットワーキングサイト「ザ・フェイスブック」を立ち上げてしまいます。
そのことに気付いたウィンクルボス兄弟らはマークを告訴しようとしますが・・・。


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観るまでは同じフィンチャーの『ファイトクラブ』風なものを想像していたのですが、
実話を元にしていることやメインが男三人であるというルックス的なことから、
どこか『ゾディアック』に似た印象を受けました。
『ゾディアック』も連続殺人事件を描きながら事件は現実通り最後まで解決せず、
それでもそのオチの無さが心地よい突き放し方をする傑作でしたが、
今作もフェイスブックが誕生するという大波以外は特に何が起こるでもなく、
(もちろん出会いや別れ、裏切りや訴訟だのあらゆる出来事が描かれはしますが)
マーク・ザッカーバーグと彼を取り巻く人々の動きを淡々と追っているだけ、
と言えなくもありません。

マーク・ザッカーバーグという人の特異性、彼の頭の回転の驚異的な早さ、
それがプログラミングやハッキングのスキルとして見せつけられ、
また他人との会話の噛み合わなさ加減や着るもののこだわりの無さなど、
人としてどうなの?という描写がたびたび登場するのですが、その結果、
彼が体験するあらゆることに「なるほどね」「しょうがないよね」と思わされはするのですが、
だからといって彼をモンスターとして描いていないし、悪意やいじわるな表現もほとんどありません。
フィンチャーの一貫して冷静な演出は、実話ベースであることによる当人たちへの敬意と、
脚色はあるにしても真実に対する公平で冷静な視線があるように思えました。


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マークは全編を通して表情に乏しく、マシンガンのようにたくさんの言葉を並べ立てますが、
その心の中はまるで見えず、彼が何を考え、感じているのかを伺うことはかなり難しい。
彼のエドゥアルドや、後に登場しマークに多大な影響を与えるナップスターの創設者、
ショーン・パーカー(ジャスティン・ティンバーレイク)に対する気持ちもとてもわかりにくい。

マークとエドゥアルドの関係、特にエドゥアルドがマークに向ける"眼差し"は、
観る側が勝手にボーイズラブ(!)的なものに変換してしまう切なさで溢れてはいましたが、
それがどこまで意図したものなのか、私が女なので単純にそう思ってしまうのかも知れませんが、
そんなこんなも含めて、マークの心の中が見えにくいのとは対照的に、
エドゥアルドの心情はとてもわかりやすく描かれていると思いました。
エドゥアルドの視点や立ち位置というのは、マークという"天才"の前では、
我々”凡人”の代表であると言えるし、そのため観ていて同情も感情移入もしやすい。
フェイスブックをビジネスにするためにエドゥアルドが取る行動はことごとく失敗してしまいます。
ネットビジネスに限らずビジネスパートナーとしてエドゥアルドのような人がいることの意味、
そのことが会社というものに与える影響など、彼はあらゆる"凡人"の象徴のように見えてきます。
エドゥアルドの存在を通すことによってマークの天才ぶりが余計に際立ち、
ショーンの胡散臭さのようなものもわかりやすく描かれる。
その意味でこの作品の主人公はあくまでマークではあるけれども、
エドゥアルドの存在の大きさもとても感じてしまいました。


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しかし、この映画はいったい何を語りたかったのかと言うと、うまく説明する自信はありません。
また、これのどこを多くの人が支持するのか、それもよくわかりません。
マークがガールフレンドのエリカに振られたことをきっかけとし、
その腹いせにとった行動がフェイスブック誕生への道に繋がる。
その後いろいろあったけれど、結局彼の心はエリカにあった・・・と思わせるラスト。
あるいはビジネスは成功し大金持ちになるけれど、親友やビジネスパートナーには去られ、
友だち作りのネットワークを作っておきながら、彼自身には友だちはいなかった、といった、
ものすごくわかりやすい答えを導くことも出来ると思いますが、
けれどもそれではあまりにイージーで、そしてクールじゃない。
ガールフレンドの一件は実際脚色であるらしいし、事実であろうとなかろうと、
それを描きたかったのであれば、なんだか単なる青春映画になってしまいそうな気がします。
フィンチャーは本当はそんな映画的脚色など抜きでマーク・ザッカーバーグという人を、
また彼が、彼の周囲の人々が作り出した"フェイスブック"という真実を、
ストレートに描きたかったんじゃないかなと思います。
なのでその"とってつけた感"はちょっと残念な気もしました。
とはいえ、最後にリロードを繰り返す姿には単純に胸に迫るものがありましたが。
そういう映画的お約束というのか、型にはまる演出をキチンと持ってくる抜かり無さが、
フィンチャーらしくもあり映画的喜びも感じさせてくれて単純に嬉しくもありました。


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これをある青年の成長物語であるという括りで観てみるとします。
コンピュータ社会、ネット社会に於いてビジネスは容易に立ち上げられ広がり続け、
自分というものや他者との繋がりが何たるかをまだ理解できないでいる、
社会がどういうものかも知らない少年のような大学生たちが、
こんな風にあっという間に巨万の富を得るまでになる。
けれどやはり中身はおそらくまだ幼いままなのだろうなと思うのは、
何をするにも一緒で楽しかった二人がちょっとしたことでうまくいかなくなり、
そこに突然ちょいワルな先輩が登場して片方が夢中になってしまい、
もう片方はそれが面白くなくて余計に距離が出来てしまい・・・という、
それがまったく中学生男子ぐらいの人間関係のようにも思えて観ていて微笑ましくもあり
やがてそれぞれが不本意な仲違いをして、どうしてこうなったのだろうと考えるとき、
それが彼らが大人の世界へと進んだ証であるとするならそれはあまりに哀しい。
けれどそんな彼らのドラマの切なさは単純に好みであり、美しい映像、絶妙な音楽の使い方、
あれやこれやで私はこの作品を心から支持してしまうのですが、
ではこれが後に残るほどの傑作であるかというとそこはやはり疑問であり、
世間の絶賛ぶりにはとまどいを感じてはいます。

ただこれをこのタイミングで作る潔さというのか、今起こっていることを今作るという姿勢、
10年後ぐらいに「フェイスブックはこうして出来上がった」
と振り返る映画ではないということの重要さをものすごく感じます。
同時代であるからこそ理解出来ることの多さ、
同時代に体験出来る幸せを感じさせるという意味では、
これはハッキリと事件だと思うし、これまでにない映画的体験に興奮を覚えます。
今作をつまらないという人がいるのもわかる。
けれど、大好きだと言う人とは何時間でも語り合いたい。
この体験が出来たことを素直に喜び合いたい、そう思える作品でした。


The Social Network(2010 アメリカ)
監督 デヴィッド・フィンチャー
出演 ジェシー・アイゼンバーグ アンドリュー・ガーフィールド
   ジャスティン・ティンバーレイク アーミー・ハマー ブレンダ・ソング
   ラシダ・ジョーンズ ルーニー・マーラ ジョゼフ・マゼロ



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シングルマン [映画感想−さ]

ある世界で成功を収めた人が他の分野でも必ず成功するとは限りません。
日本ではミュージシャンや作家、コメディアンなどが映画監督によく挑戦しますが、
成功したと言える人はかなり限られていると思います。
では海外ではどうかというと、作家や画家、俳優などがメガホンを取ることはよくあるけれど、
異業種から監督業へという人は意外に少ない気がします。
今作の監督トム・フォードはファッションデザイナーというまったく他所からの参戦でありながら、
驚くほど完璧な映画を作り出してしまいました。


1962年11月30日金曜日、ロサンゼルス。
大学教授のジョージ(コリン・ファース)はある夢にうなされながら目を覚まします。
それは長年のパートナーであったジム(マシュー・グード)が、
雪原で横転した車の脇で血まみれになって息絶えている姿。
8ヶ月前にジムを事故で失ったジョージの悲しみは今も癒えず、むしろ日ごとに深まるばかり。
生きる意味を失い、抜け殻のようになったジョージはその朝、
いつものように仕事へ向かう準備をしながら、この苦しみを終わらせようと決意します。
大学へ向かい、いつもより熱く自身の心情を交えた講義を終えるジョージ。
すると、彼の講義に感銘を受けた学生のケニー(ニコラス・ホルト)が近づいて来て・・・。


悪夢
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ファッションデザイナーも創造するという点ではアーティストであるわけだし、
映画製作との共通点も多いのではないかと思います。
当然ながら高い美意識を持った職種の人なのだから美しい映像を作り出すことのこだわりは強く、
また、そうすることに無理はないのかも知れません。
しかし、こういった美意識の高い職業の人・・・画家や写真家などが映画監督となると、
なんとなく美しい映像だけの、雰囲気だけで流れていくようなものになりがちだったりしますが、
この作品は、そんな心配はまったくありませんでした。

愛する人を亡くした悲しみから立ち直れないジョージは粛々と自ら命を絶つ準備を進めます。
部屋を片付け荷物を整理し、葬式での自分の死装束まで用意する。
この服に付けるノートの"指示"にジョージという人のこだわりが見え、
またそこにはトム・フォードのファッションデザイナーとしてのこだわりもあるのかなと思ったり。
それらは決して嫌味でなく実にスマートなのですが、しかしその後、
ジョージがいざ銃口を銜えようとするとなかなか体勢が整わずもたついてしまう無様さに繋がると、
それまでの無駄も抜かりも無い彼の様子に人間臭い悲しさと滑稽さが混ざり、
ジョージと、この作品そのものをなんとも愛おしいものにしていたように思いました。


現実
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普段は鬱陶しく思っていた隣家の少女や、ふいに言葉を交わしたスペイン人の青年など、
最後となるであろう日にジョージはいくつもの出会いや発見をします。
また、長年の"親友"であるチャーリー(ジュリアン・ムーア)と昔話に心から笑い興じ、
複雑ながらも楽しいひとときを過ごします。
そしてジョージは自分を慕って近づいてくるケニーと出会う。
若く美しいケニーとの束の間の戯れに、ジョージは微かに生きる希望を抱きます。
そしてラストにジョージに訪れるのは・・・。
この終わり方は、裏切りでもあるし当然の成り行きでもあると思いました。
まさになるようにしかならない結末で、これを悲劇と取るかハッピーエンドと思うかは、
ジョージにしか決められないことかも知れませんが、
そこで観客が見せられる映像はあまりにも美しく優しく、
私にはこれ以上ないハッピーエンドだと感じ、胸が震えました。

60年代においてはまだ相当にタブーであったという同性愛を描いていますが、
しかしことさらにそれを強調するわけではありません。
ジョージの悲しみや葛藤は現代でも、そして異性愛でも十分に通じるものであり、
そのため話そのものに何か目新しさを感じるようなものにはなっていません。
また、ジョージの朝から夜までのある一日だけを描いた話でありながら、
夢や心象風景、ジムとの過去の出来事なども見せたりと、たびたび時間軸が動かされるのですが、
それも流行りのオシャレな映像といった小手先のものにはなっていません。
あらゆる事柄が研ぎ澄まされ削ぎ落とされ、そしてそれが適切に美しく飾り付けられていて、
ひとつとして無駄なものが描かれていないと言ってもいいと思いました。


孤独
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設定である1962年の作品なんじゃないかと錯覚してしまうほど完璧に再現された60年代。
(最初にこの作品のポスターを見たとき、黒縁メガネのコリン・ファースが、
マルチェロ・マストロヤンニに見えてしまい、てっきり昔の作品だと思ってしまった!)
色彩、構図といった映像的なことからファッションや家具や小物類、
そしてキャスティングまで含めてほぼ完璧と言っていい美しさで満ち溢れています。
特に映像全体の色づかいが素晴らしく、レンズの前に薄い布を何層か被せたり、
あるいは一気に剥がしてみせたりしているような、実に細かく繊細な色彩の変化。
ジョージの心の動きによって彼が見ている景色が変わる様を色彩の微妙な動きで表しているようです。

主要な男性陣、コリン・ファース、ニコラス・ホルト、マシュー・グードは、
それぞれがそれぞれの託された役柄を素晴らしく完璧に演じていました。
特に最初から死人であり過去の人であるジム、彼を演じるマシュー・グードは、
ジョージの目を通した姿であるとはいえ、ゲイであることを恐れず、
まっすぐにジョージを愛する屈託のない瞳で、とにかく素晴らしく魅力的でした。
(個人的な贔屓目かも知れませんが!)
ほんのひとときジョージと関わりを持つ、スペインから来た男に、
トム・フォードのモデルでもあるジョン・コルタジャレナ、
ジョージの同僚役としてワンシーンのみ出演のリー・ペイス、
さらに本当にちらりとしか見えない隣人役でテディ・シアーズが登場しますが、
いずれも美形な俳優を贅沢に使っていて、このあたりの揃えっぷりはさすがです。


希望
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そんな、見た目もファッションも美しい男性陣に比べて女性の描き方は、
アイラインや口紅のクローズアップでことさらに"女"を強調され、
それが当時のスタイルではあるとしても"女はこんなである"と言わんばかりなのですが、
しかしこれが私には不思議にイヤな表現には感じられず、
女性キャラクターたちにもきちんと尊敬や愛情の眼差しを向けているように思えました。
そこが、あからさまに女優はどうでもいい描き方の(そのつもりはないかも知れませんが)、
ガス・ヴァン・サントなんかとは違うところかなと思いました。
中でも女性陣の代表として登場するジュリアン・ムーアの、
年相応のシワやシミ、体型の崩れ方を隠すことなく見せながらも、
それを単純に醜いものや哀しいものとしては描いてなくて、
彼女がどんな人であるかの描写はほとんどありませんが、ジョージへの想いが叶わない哀しさ、
自堕落に見える生活にも理由があると思わせる、敬愛の眼差しがきちんと感じられました。
もちろんジュリアン・ムーア自身がそもそも持つ上品さがあってのこととも言えるかも知れません。
いわゆる同性愛を描いた映画における異性のぞんざいな扱いとはまったく違って、
それはトム・フォードの演出力なのか偶然によるものかわかりませんが、
結果的に物語の特異性のようなものを良い方向に薄め、高めているように思いました。

この文章中、何度「美しい」という言葉を使ったか、数えるのも恥ずかしいぐらいなのですが、
映像もストーリーも美しいとしか言い表せない、それが実に心地よく豊かなものを残してくれた気がします。
大学教授と若者の取り合わせがなんとなくヴィスコンティの『ベニスに死す』を思い出させ、
それを持ち出すのは褒めすぎかも知れませんが、監督第一作でここまでのものを作り上げた、
そのことは無条件に持ち上げてもいいと思います。
トム・フォードが今後どういった映画監督となっていくのかはわかりませんが、
期待せずにはいられない、彼の映画界への進出を心から感謝したい気持ちでいっぱいです。
ファッションデザイナーが映画監督なんて、ゲイの監督がゲイの話なんて・・・という、
つまらない偏見を持って観ないでしまったらおそらく一生後悔するぐらいの、
真っ当で真っ直ぐな、美しい映画。ぜひ。


A Single Man(2009 アメリカ)
監督 トム・フォード
出演 コリン・ファース ジュリアン・ムーア ニコラス・ホルト
   マシュー・グード ジョン・コルタジャレナ ジニファー・グッドウィン
   ライアン・シンプキンス テディ・シアーズ リー・ペイス



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17歳の肖像 [映画感想−さ]

以前どこかで今作の主演キャリー・マリガンの写真を見て、
そのなんとも愛らしい表情が気に入ってしまい、
それに相手役のピーター・サースガードも大好きなので、
早く観たくてしょうがなかった作品です。
そんな若干ミーハーな気分も最後はどこかへ行ってしまうぐらい、
これは本当に素晴らしい。ここまで良い作品だとは思ってませんでした。


1961年、ロンドン郊外トゥイッケナム。
16歳の高校生ジェニー(キャリー・マリガン)は成績優秀な少女で、
両親(アルフレッド・モリーナ、カーラ・セイモア)は彼女が、
オックスフォード大学へ進学することを期待していました。
ジェニーはその期待を受けて勉学に励みながらも、
映画やシャンソンなどを通してフランスに憧れ、
大学へ進学してからの自由な生活を夢見ていました。
ある雨の日、ジェニーはチェロの練習の帰り道で、
年の離れた男性デイヴィッド(ピーター・サースガード)に声をかけられます。


フランス人になりたい
aneducation_1.jpg


キャリー・マリガンがオードリー・ヘップバーンの再来なんてことを言われているそうで、
確かにこの作品での年上の男性との恋、パリに行ってどんどんおしゃれになって・・・等々、
それだけ聞くとイメージとしてはヘップバーン作品のようではありますが、
しかしこれはそんな甘いラブストーリーなんかじゃ決してありません。
それにしても今考えるとヘップバーンが出演した50〜60年代のアメリカ映画は、
不自然なぐらい、年齢差カップルの恋物語を描いていました。
ヘップバーンのお相手はグレゴリー・ペック、ハンフリー・ボガート、ケーリー・グラントなど、
いずれも彼女より10歳以上は年の差がある人ばかり。
昔のハリウッド映画にこういう年齢差カップルが多かったのは確か何か理由があったと、
以前どこかで読んだ記憶があるのですが何だったかな?
当時、映画で描かれる理想の男は必ず大人でなくてはならず、
女優には今以上に若さが求められていた・・・みたいなこともあったみたいですが。

ところがこれを今の時代に描かれると(といっても今作は1961年の設定ですが)、
なんとなく不自然さを感じ、デイヴィッドは単にロリコンなのか?とか、
下世話な感情がチラッとかすめてしまったり、どんなウラがあるんだろうと思ったりと、
最初は単純にラブストーリーとして受け入れていく気持ちにはなれませんでした。
昔のハリウッド映画ならそんな風には思わないのに、不思議です。
もちろん今作の2人も純粋に互いに惹かれ合い恋愛へと発展していくのですが、
ヘップバーン作品のようなハッピーエンドになるとは思えない不穏さを感じていました。
なぜこんなに違う印象を持ってしまうのでしょう?
おそらく昔の映画は浮世離れな感じがして現実味がなく、
そのせいで普通に夢物語として受け入れられたのかも知れません。
それにキャリー・マリガンとピーター・サースガードには、
今の時代のリアルさや生々しさを感じてしまうのかなとも思いました。


いろんなことを教えてあげたい
aneducation_2.jpg


不思議だったのは娘よりはるかに年の離れた、どこから現れたかもわからない、
デイヴィッドという男のことをジェニーの両親があっさりと受け入れることです。
おそらくデイヴィッドは最初からキチンと両親に挨拶したりして誠実さを感じさせる。
話も上手いし、お世辞言ったりとか調子良さそうなところもあるけど口先だけの男には見えない。
両親には彼がキチンとした"紳士"に見えたのかも知れません。
ジェニーの父親は娘をオックスフォードに行かせようとしているけど、
もしこの男が娘と結婚してくれるのならそれもいい、いやむしろそのほうがいいと思ってしまう。
こういうのはこの時代の、そしてお国柄もあるのかも知れませんが、
まだ女は社会に出るより家庭に入る方が良いと思われていたのでしょう。
良い大学を出て教師などの安定した職に就くか、幸せな結婚をする。父親にはその二択しかない。
でもその二択の間や周りには、良い音楽や見知らぬ文化や、あらゆる楽しみ、幸せがある。
そのことをジェニーなど若い世代は良く知っているので強烈にそれを求めてしまう。
そのへんの世代間のギャップのようなものがすごく面白かった。
でも父親のこの頭の固さが、デイヴィッドの怪しさを見抜けない不幸にも繋がっていて、
父親の娘への愛情の向け方が間違っていた、と言ってはあんまりなんですが、
親ってこういうものなんだろうな、というのが痛いほど伝わって来ました。
母親は父親よりもう少し娘の気持ちを尊重しようという柔軟さがあるんですが、
それでも娘が夜遅く帰るのを台所で一人、鍋のコゲを取りながら待ってるのとか、
なんだかイヤでも自分の母親が重なって見えてしまって胸が痛くなってしまいました。


娘を幸せにしたい
aneducation_3.jpg


ジェニーを取り巻く大人たちの中でもう一人印象的なのが、
ジェニーが通う高校の教師、スタッブズ先生(オリヴィア・ウィリアムズ)。
すごく真面目で堅そうで、成績優秀なジェニーを気にかけていて、
だから彼女がどんどん道をはみ出していくことをすごく心配している。
そのためジェニーと先生は対立してしまうことになります。
ジェニーの言動に先生のほうが傷ついてしまったりもするのですが、
最後には心が通じ合う出来事が起こります。
この先生の存在も、ジェニーが大人になるための大事な一人。
こんな素敵な先生がそばにいたことはジェニーにとってとても幸せなことだったと思います。

一方、ジェニーを悪い?大人の方へ導いてしまうのがデイヴィッドと、
その友人のダニー(ドミニク・クーパー)とヘレン(ロザムンド・パイク)。
この友人カップルも面白い存在で、特にヘレンはなかなかに強烈です。
彼女はいったい何者なのか謎なのですが、物事を深く考えない、
その時さえ楽しければいいという感じで男たちと行動を共にしている。
出会った瞬間からジェニーを妹のように可愛がり、性格はすごく良さそうだけど、
おそらくお勉強はまったく出来なさそうというのが、いろんな彼女の言動でわかります。
この、いい人だけど頭は空っぽのヘレンというキャラクターを、
ロザムンド・パイクはすごくうまく演じています。
ホント、この人は魅力的な女優さん。ちなみに彼女とキャリー・マリガンは、
『プライドと偏見』では姉妹の役を演じていました。


楽しいことだけしていたい
aneducation_4.jpg


イギリスのジャーナリスト、リン・バーバーの自叙伝が原作。
これを『ハイ・フィデリティ』や『アバウト・ア・ボーイ』のニック・ホーンビィが脚本化。
情けない男を書かせたらこの人の右に出る者はいない!のニック・ホーンビィらしさは、
デイヴィッドという男の描き方に集約されていると思います。
ピーター・サースガードが演じている時点で、このデイヴィッドが、
決してグレゴリー・ペックじゃないだろうことは予想されるのですが、
単にどうしようもない男というだけじゃない、デイヴィッドの純粋さのようなものを、
この脚本とサースガードの演技が素晴らしく表していると思いました。
罪作りなヤツなのに憎めない。本当にこういう男はキケンです!
そして父親役のアルフレッド・モリーナもまた素晴らしく情けない。
娘を愛するが故のどうしようもない頑固さ。彼の佇まいはどのシーンもジンと来てしまいます。

原題の『An Education』=「教育」というその言葉は、
高校での授業や大学受験に向けての勉強、大学へ入ってからの勉強から、
人が成長するために受ける教育、そして人を導くための教育など、
いろいろと形や意味を変え、あらゆる人が口にすることになります。
人は何のために教育を受けるのか、他人を教育するのか。
学生時代はまさにその言葉と共に過ごしているはずなのに、
おろそかにしがちだったり、その存在意義に疑問を持ったりします。
ジェニーは苦手なラテン語の教科書に向かっているよりもっと大切なものがあると思った。
目の前に出された魅惑的なものたちにまっすぐに惹きつけられてしまった。
私もやはり十代の頃は好奇心に満ちていたし、刺激を求めていたと思います。
ジェニーのようにお勉強は出来なかったけれど、だからこそ、
世の中には学校に行くより大切なことで溢れていると思っていました。
60年代初頭、今よりはるかに情報の少ない時代、
ジェニーの目の前に現れた”大人の世界”はどんなに光り輝いて見えたことでしょう。
けれど、キラキラと魅惑的なものを簡単に手に入れる近道はなかったことにジェニーは気付きます。
しかし彼女の体験したことは痛みも伴ったけれど、十分に"an education"だったと思います。

今でもジェニーの年代の人たちにはこの映画の言わんとするところはやっぱり通じにくいでしょう。
刺激を求めていたティーンの時代を"あの頃"と思える世代には、痛くて眩しい物語。
本当に良い作品でした。今年観た中で現時点ではトップと言っていいぐらい。
キャリー・マリガンの素晴らしさと共に、ぜひ楽しんで欲しい作品です。


An Education(2009 イギリス)
監督 ロネ・シェルフィグ
出演 キャリー・マリガン ピーター・サースガード アルフレッド・モリーナ ドミニク・クーパー
   ロザムンド・パイク オリヴィア・ウィリアムズ エマ・トンプソン カーラ・セイモア
   マシュー・ビアード サリー・ホーキンス



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