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英国王のスピーチ [映画感想−あ]

今年度アカデミー賞作品・監督・脚本そして主演男優の4冠に輝いた今作。
ようやく鑑賞。


1925年の大英帝国博覧会閉会式で、ジョージ6世(コリン・ファース)は、
父親ジョージ5世(マイケル・ガンボン)の代理として演説を行いますが、
吃音症である彼はうまくスピーチできず散々な結果に。
それから彼は何人もの専門家による治療を受けますが、なかなかうまくいきません。
数年後、ジョージの妻エリザベス(ヘレナ・ボナム=カーター)が、
言語療法士、ライオネル・ローグ(ジェフリー・ラッシュ)のオフィスを訪ね、
彼に夫の治療を依頼します。
ジョージをオフィスに通わせ、独自の療法で治療を行おうとするローグに、
ジョージは最初、反発しますが・・・。


悩める英国王
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先にオスカーでの圧勝(と言っても4勝ですが)ぶりを見ていたので、
それなりに期待はしていたわけですが、ここまで"普通に佳作"だと、
なぜこれが(少なくとも『ソーシャル・ネットワーク』に)勝ったのかと、
そこにばかり思いが行ってしまい、純粋に楽しむことが出来なかったような気がします。
オスカーに於いて、実話ものであることの強みは常にあるものだし、
主演のコリン・ファース、脇に立つジェフリー・ラッシュとヘレナ・ボナム=カーターが、
それぞれ良い芝居をすることも最初からわかっているわけで、
映画のスタート時点から障害となるものはほとんど何も無いに等しい。
だからといってそのままオスカー受賞となるものなのか。
やはりその年の頂点に立つ作品であるのなら、何かそれ以上の、
プラスアルファの部分があるのかとヘンに期待してしまったわけです。
しかしこれが本当に、見事なくらい正統派の良い作品でした。
だからこそ、オスカー発表前に観ておけば良かったと、ちょっと後悔してしまったのでした。

こういうイギリス王室暴露話、しかもほんのちょっと昔の、
まだ関係者も生きている段階での製作に、イギリス王室の懐の深さや、
イギリス映画人の肝の据わり方を改めて感じてしまうわけですが、
そうなるとどうしても思い出すのは2006年の『クイーン』です。
あちらの設定はもっと最近のこと、しかもダイアナ妃の死という、
王室的に一番触れて欲しくないであろうスキャンダラスなネタを、
絶妙に絡めているあたりでとても刺激的なものになっていたし、
さらに堂々とした女王ぶりを見せるヘレン・ミレンの演技も素晴らしいものでした。
比較するのは無意味ですが、今作にあれほどの興奮は感じられませんでした。


悩める役者志望
thekingsspeech_2.jpg


では、どこがダメだったのかと言われたら本当にダメな所など無いに等しくて、
主要三人の演技はやはり素晴らしく、特にコリン・ファースはオスカー受賞も納得。
個人的には昨年の『シングルマン』で受賞して欲しかったとは思いましたが。
それから映像の美しさ、特にとてもわかりやすい特異な構図や色づかいは、
大きいスクリーンで観ることに十分な意味がある素晴らしいものでした。
ローグのオフィスの妙に広くがらんとした様子、ソファ、蓄音機、
ティーセットや作りかけのプラモデルが乗るテーブルの配置、
大きく開いた窓などはまるで舞台のセットのようで、
この空間を活かした構図にはどこか演劇的な美しさを感じました。
治療のあれこれは役者のトレーニングのようでもあり、
まさにそのまま舞台劇を観ているよう。

ストーリーもことさらに大袈裟にドラマチックな展開を見せたりせず、
登場する人々のほとんどが好人物に描かれているし、
王室という、私たちからしたら想像するしかない生活ぶりも丁寧に描かれていました。
公務部分などはこんな風に執り行われるのかと感心させられ、
特にジョージの父親のジョージ5世がおそらく認知症となってしまい、
王位を譲ることになった際の手続きの、形式張った様子の冷徹さ。
その一方、妻エリザベスや娘たちとの会話や暮らしぶりは、
軽口をたたいたり冗談を言い合ったりとまるで庶民と変わりません。
ジョージがローグの治療を受けるにあたり最初は頑なでなかなか受け入れようとしないのが、
徐々に心を開いていく様はベタでもありますが丁寧でキチンとドラマになっています。
妻エリザベスは王の妻という立場でありながら柔軟だし行動的で物言いもハッキリしている。
夫のために密かに医者や専門家を一人で探すというのは、
今ほど顔を知られることがない時代だったからこそ出来たことなのかも知れませんが、
まるで娘である現エリザベス女王を彷彿とさせるというか、
やはりこういうところがイギリス女性の強いところなのかなあと思わされたり。


悩める心強き妻
thekingsspeech_3.jpg


ローグは実は吃音治療に関しては無資格で、もういい年であるのになぜか役者を目指しており、
しかしオーストラリア人であることもあって役になかなかつけず失意の日々を送っていたりと、
かなりアヤシゲな人ではあるのですが、その胡散臭い感じをあまり前面に押し出さず、
妻や息子たちとのつつましい暮らしぶりを見せることで、最初から信頼のおける、
ジョージの良い味方になることがわかるように描かれていて、
このあたりは実在した人物であることの配慮から来るものかも知れないし、
結果、そこに若干物足りなさも感じはしましたが、
こういうところも上品で誠実な演出だなと思いました。

ほかに、どうしてもジョージの兄には見えないエドワード8世にガイ・ピアース。
調べたらやはりコリン・ファースのほうが7つも年上!
けれども世紀の大恋愛の末に王室を追われた元英国王の、どこか頼りなげで、
いかにも王位より愛を選んだ男という雰囲気をとてもよく出していました。
厳格ですが後に認知症となり国政に携われなくなる父親ジョージ5世にマイケル・ガンボン、
チャーチルというよりどう見てもティモシー・スポール(!)なティモシー・スポール、
作品中、唯一の憎まれ役と言えそうな大主教役にデレク・ジャコビなど、
イギリス映画の名優がたくさん登場して、彼らの演技もとにかく安心して楽しめました。
本当に上質な、普通に良い映画。だからこそのプラスアルファが欲しかったというのは、
贅沢な話なのかも知れません。


The King's Speech(2010 イギリス/オーストラリア)
監督 トム・フーパー
出演 コリン・ファース ジェフリー・ラッシュ ヘレナ・ボナム=カーター
   ガイ・ピアース ジェニファー・イーリー マイケル・ガンボン
   デレク・ジャコビ ティモシー・スポール アンソニー・アンドリュース



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アンストッパブル [映画感想−あ]

1月も半分過ぎてしまいましたが・・・あけましておめでとうございます。
2011年もよろしくお願いいたします。
昨年はかなり更新をサボってしまい、ソネブロの中の人にも、
「もうちょっとがんばりましょう」と言われる始末だったので、
今年は心を入れ替えてガンバリたいと思います。
では本年一発目は景気よく(?)ドッカーン!てなカンジで『アンストッパブル』を!


ペンシルベニア州の操車場で、運転士のデューイ(イーサン・サプリー)のミスにより、
39両編成の貨物列車が無人のまま暴走を始めてしまいます。
この列車には大量の発火燃料と有毒化学物質が積載されており、
このままでは市街地で脱線転覆し大惨事となることが予想され、
操車場長のコニー(ロザリオ・ドーソン)はなんとかこの列車を止めるために、
州警察に協力を求め上層部と解決策を話し合い決行しますが、作戦はことごとく失敗してしまいます。
しかしその時、同じ線路上にベテラン機関士のフランク(デンゼル・ワシントン)と、
その日が初勤務の新米車掌ウィル(クリス・パイン)が乗車する別の貨物列車がいました。
暴走列車を目にした2人はある作戦を思いつき、この列車の後を追い始めますが・・・。


ワケありなベテラン
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内容はタイトルそのままだし、予告編やCMで観たまんまで何も予想を裏切られることはない、
最後はどうせデンゼル様がサラッと解決してくれるんでしょ?と思いながらも、
最初から最後まで見事にカッチリとドキドキハラハラさせてくれました。
70〜80年代頃によくあったパニック映画のようで、こんなわけないだろうといちいち思いながらも、
どうしてこんなに単純な話にアツくなってしまうかと呆れるぐらいの面白さ!
なんだか正しいお正月映画を観たなあと、とにかく大変楽しく観ることが出来ました。

暴走列車の突進ぶりやいろんなものに激突し蹴散らしていく様子は、
おそらくかなりの部分CGで描いてるんだろうなとは思うのですが、
いろんなものをなぎ倒し、ぶち壊していく様子がとにかく楽しい。
とっくに脱線〜大惨事になってると思うのにまだ持ちこたえる!?
エエエ!?と思いながらも、あの手もこの手も失敗していく様子に、
「よーしまた失敗!」という不謹慎な気持ちをいちいち持ってしまい、
ひとつひとつの"イベント"ぶりから一瞬も目が離せませんでした。

最初のきっかけとなる運転士の呆れた凡ミスぶりや、
これだけの大事故なのに司令部から指示を出し、対策を考え、
上層部と意見を戦わせ・・・といった大仕事をやる人が、
操車場長のコニーともう1人の男性ぐらいしかいないというのも信じられなくて、
アメリカの鉄道会社のレベルの低さにもまたびっくりしてしまいました。
でもロザリオ・ドーソンの働きっぷりはカッコよくて、作品に花を添える以上の大活躍でしたが。


ワケありな新入り
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ベテラン機関士と新米車掌という組み合わせで、最初は何かと対立しあうのに最後は・・・とか、
上層部は現場のことがまるっきりわかってなくて自分たちの都合しか考えず、
結局それらがことごとく失敗して・・・なんていうのが、
これまで何万回も描かれて来た定石と言ってもいいようなストーリー展開なんですが、
そういったあらゆることがカッチリと、まさにこちらの期待どおりに描かれているので、
そのために余計なことに気を回す心配もないというのか、
純粋に暴走列車の行く末をハラハラしながら追いかけていられる気がしました。

最近のトニー・スコット作品はちょっと見逃しているのですが、
映像の作りが、ちょっと昔の"スタイリッシュ"というか、
いちいちキメのカットを大袈裟なぐらいに見せていく感じが相変わらずだなあと思いました。
そういう過剰なこだわりがかえって現実味を失わせて、延々大暴走列車ショーを見せられている感じで、
大惨事になりそうな話だというのについニヤニヤして観てしまう。
最初は、カメラが被写体に急にグイッと寄るカメラワークが、
一時期流行ったドキュメンタリータッチに見せる手法っぽくてちょっと鬱陶しく感じたのですが
これももうこういうスタイルなんだから、これこそまさにトニー・スコット節ってことかもね、
なんて思って、だんだん気にならなくなって行きました。


止まらない!
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なんだかんだで最後はデンゼル・ワシントンが持って行くんだろうなと思い、
実際そうなりそうな活躍ぶりを最後に見せるのですが、意外なことにさらにもうひと山あって、
そこで新米クリス・パインにいいところを渡すという余裕ぶりに、
かえって"デンゼル様カッコイイ!"と思ってしまいました。
クリス・パインの役はちょっと前ならマーク・ウォールバーグあたりがやるといいかなあ、
なんてことを思いながら観ていましたが、この人はよくわからない役者さんです。
もうちょっと何かこの人ならでは!と思わせる魅力があるといいのになあと思いました。
フランクとウィルそれぞれの家庭の事情が要所要所で語られて、
それらも最後にはこれまた予想通り丸く収まるのですが、
そのあたりの物足りなさも敢えてギリギリ嫌味がなく、ウエットにし過ぎてない感じで良かったです。

それにしても、こういった事件事故というのは今はTV局がライブで多方面から報道してくれるわけですが、
そんなニュース映像を挟み込むことによって、現場にいない家族や関係者などが、
現場の様子をどうやって知り理解したのかという説明になっていて、
さらにその様子をこちら側も観ることによって、そうやって状況を知ったのね、と理解する。
昔なら誰かが都合よく、すべてが見下ろせる丘か何かに立っていたとかいうことでしか、
説明のつかなかったことなのに、そんなニュースや中継映像の使い方も実にうまいと思いました。
映像、演技、演出と、あらゆる職人芸の結晶を見せられた感じで、
いつまでも心に残る作品というのとは違いますが、
暴走機関車のこれ以上ない豪快な暴走っぷりは文句なく気持ちいいし、
エンタテインメントとしてぜひ大きなスクリーンで楽しんで欲しい作品だと思いました。


Unstoppable(2010 アメリカ)
監督 トニー・スコット
出演 デンゼル・ワシントン クリス・パイン ロザリオ・ドーソン
   イーサン・サプリー ケヴィン・ダン ケヴィン・コリガン
   ケヴィン・チャップマン リュー・テンプル T・J・ミラー
   ジェシー・シュラム デヴィッド・ウォーショフスキー



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インセプション [映画感想−あ]

何かと忙しくて1ヶ月以上更新をサボってしまいました。
忙しさは相変わらずなのですが(その割にTwitterには普通にツイートし続けてますが!)、
少しは更新しないとソネブロの中の人に怒られそうなので重い腰をほんの少し上げることにします。

というわけで今回は最初から大傑作!と言ってしまうしかない『インセプション』を。
本当はもう一度(あるいは二度三度)観てから感想を書きたかったのですが、
相変わらず忙しくていつ行けるかわからないので、
とりあえずこの一度目の状況で感想を書くことにしました。
それも、観てからもすでに2週間近く経ってしまっているという曖昧さの中なので、
忘れてることや勘違いも多々あるかも知れませんがどうぞご容赦ください。

それから、この作品はどうしても内容に触れずに書くことは不可能だし、
いわゆるネタバレと思われても仕方ない文章になってしまうと思うので、
未見でネタバレはカンベンという方はご覧になってからもう一度お越しください。
とにかくこれは、できればまっさらな状態で観て欲しいです。


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コブ(レオナルド・ディカプリオ)はある特殊な技能を持った企業スパイ。
その"方法"は、人の夢に入り込み、アイディアを盗み取るというものです。
そんなコブの元に、ある大企業のトップであるサイトー(渡辺謙)が接触してきます。
彼の依頼はライバル会社社長の息子ロバート(キリアン・マーフィー)に、
あるアイディアを"インセプション"(植え付け)し、その会社を解体させるよう仕向けるというもの。
それはあまりにも困難な依頼でしたが、実はコブはある事件の容疑者として指名手配中で、
母国アメリカへ入国できないという事情を抱えており、
サイトーはもしこのミッションが成功したらコブの犯罪歴を消し、
無事帰国できるよう手配すると持ちかけ、コブはその仕事を請け負うことにします。
そこで昔からの仕事仲間であるアーサー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)、
イームス(トム・ハーディ)、ユスフ(ディリープ・ラオ)らを招集、
さらに建築を勉強中のアリアドネ(エレン・ペイジ)を新たにメンバーに加え、
ミッションを決行しますが・・・。


この作品、監督・キャストがとにかく期待せずにはいられない魅力的な面々ばかりで、
小出しにされる製作情報、撮影現場のスチルなどを目にするたびに期待がどんどん膨らんでいって、
これはもう期待しすぎで始まっちゃうとアレアレ?となるんじゃないかという心配すらありましたが、
いえいえ、まったく無用な心配でした。
確かに冒頭のハリウッド的ヘンな日本描写にチラッと不安はよぎりましたが、
そんなものはあっという間にどこかへ吹っ飛んでしまいました。
まあヘンな日本描写と言ってもこのシーン、すでに夢の中なんですね。
そう思えば多少の奇妙さも気にならないし、謙サンのヘンにキモノチックな服も、
謙サンだから全然違和感なく着こなしちゃっててむしろカッコイイ!

コブ率いる夢泥棒集団は、武器やクスリや変装に詳しいメンバーがそれぞれに活躍するところが、
『オーシャンズ』シリーズのあの泥棒チームみたいな雰囲気です。
あちらからお気楽な笑いの部分を抜いて、お爺ちゃんやカンフー使いなど人数も減らして、
目的が大金じゃなくアイディアを盗むこと、そして舞台をラスベガスじゃなく夢の中にした感じ・・・と、
かなり安直な例えでお恥ずかしいですが、でもあちらより少数精鋭な分、
こちらはテキパキした手際の良さを見せてくれるのでだらけることもありません。
だらけるも何も、全体にあまりにも情報量が多すぎてだらけてるヒマもないというのが正直なところで、
全神経を集中して観ていても、ちょっとでも「あれ?」と思ったら最後、
あっという間にそこに置いてきぼりにされる感じで一瞬でも気が抜けません。


inception_2.jpg


人の夢に潜入してアイディアを盗むとか潜在意識を植え付けるとか、
話を聞いただけじゃ訳がわからないし、実際見終わっても「?」と思う部分は多々あります。
夢に潜入する方法も、たびたびその"機械"は登場するし、一応劇中で説明もされるのですが、
「夢に潜入するんです」「ハイわかりました」という感じの強引さです。
ジャック・フィニイの『ふりだしに戻る』という有名なSF小説がありますが、
これはある場所で強く"念じる"と、その場所の過去の時代にタイムスリップするという話で、
いわゆるタイムマシンのような機械的なものは一切登場しないちょっと変わったタイムトラベルものでした。
私はこのアイディアがものすごく面白くて、読んだ当時とても夢中になったのですが、
たまたま最近、ちょっと調べたいことがあって何年ぶりかでこの本を手に取ったばかりだったこともあってか、
今作を観ているあいだ、この『ふりだしに戻る』の強引さをなんとなく思い出していました。
映画だしSFだしで何でもアリでいいと思うし、個人的にやたらメカや仕組みなど理屈っぽいものより、
「そういうもんなの!」で押し切る話の方が好きなので、この点が本当に楽しいなあと思いましたが、
そういう曖昧さが理屈に合わないとか矛盾点が気になってしまう人には、
あまり単純にこの世界を楽しむことはできないかも知れません。

夢から覚めるためには死ぬか強烈な"キック"を使うというのは、
実際自分が何か怖い夢を見ている時「これは夢なんだから覚めて覚めて!」と思い、
無理矢理何かに突っ込むとか無茶をする・・・ということをよくやる(!)ので、
妙にこのルールには納得してしまいました。
また、シャンパンの飲み過ぎで夢の中がどしゃ降りなんていうのは、
寝ていてトイレに行きたいと雨や水の夢を見るとよく言われるアレね、なんて、
そんな感じで私たちが普段見ている夢に対する接し方や考え方が踏襲されているというか、
「あ、わかるその感覚!」という点がいくつも出てきてそういうところも単純に楽しめました。
それと、ターゲットとなる人が今自分がいる世界が現実ではなく他人の夢の中だと認識すると、
夢の主が途端に通行人にじろじろ見られたり攻撃されるというのも面白くかつ不気味で、
これもまさにいやな悪い夢を見ているような恐怖を感じさせました。

やがてミッションは夢の中の夢、さらに夢という多重構造を作り出すことになり、
それぞれの階層で流れる時間が違い、夢の舞台も様々で、
またある条件により夢の中で死ぬと"虚無"に落ちるというルールも登場します。
これらは観ている間「えっと、これって?それって?」と私のアタマでは混乱しそうになるのですが、
圧倒的に美しく強烈な映像でぐいぐい、ぐいぐい話を進めていくので、
観ているこちらも宙に浮かされ夢の中に押し込まれ巻き込まれていく感じで、
この強烈さはただただ「面白い」というどうしようもなく陳腐な言葉で表すしかありません。


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実はコブは妻モル(マリオン・コティヤール)を不幸な事故で亡くしたことがトラウマになっていて、
そのため非常に不安定で、それがミッション自体に悪影響を与え、何度も危機が訪れます。
有能な集団が次々に仕事を成功させ解決させていくのかと思えばそうではなくて、
しかもリーダーであるコブが一番不安定な問題を抱えているということで、
単純なアクションものにしていないところがどこか同じクリストファー・ノーラン監督作である、
『メメント』や『ダークナイト』の主人公の影を描いたものに通じるところがあると思いました。

サイトーの思惑やロバートの父親(ピート・ポスルスウェイト)との確執などが、
どのように展開し、成功するのか失敗に終わるのか、そもそも何を持って成功というのか、
どこが終着点なのかが本当にわかりません。
すべてが夢の中で行われていることで、しかもその夢の中のさらに夢、またさらに夢という、
いくつもの階層へとどんどん深みにはまっていく展開がとても複雑で、
アタマの中で「?」がグルグル、クルクル回り続けてしまいます。
けれどそんな壮大なハッタリのような、だからどうしたいのよ!?みたいなことが、
まったく不愉快にもならず、ただただこの大袈裟な夢の世界にずっと居たい!
このまま虚無に落ちてもいい!と思ってしまうのでした。
そんな「このままずーっとやってて欲しい」と思う反面、
見終わって早く「あれは」「あのシーンは」「あそこの意味は」と、
いろんなことを誰かと語り合いたくもなります。
一度では理解しきれない部分がたくさんあるので、結末をわかった上で、
見渡しきれなかった、見落としていた細部を確認する意味でももう一度、二度と繰り返し観たいと思わせます。

おそらく多くの人が『マトリックス』を初めて観た時の感触を思い出すのではないかと思うのですが、
今まで観たことのない世界、世界観、刺激的な映像など共通点はかなり多いと思います。
けれどカンフーやガンアクションなど、その後の続編の展開なども含め、
『マトリックス』はどちらかというとオタク受けの色あいが強かった気がしますが、
こちらはサスペンスやリアルなアクションを見せながら、さらに夫婦や親子の愛情といったものまで描き、
最初から最後まで余計な部分や冗長だと思わせるところがまったくない、
ものすごくキッチリとクールにクレバーに描ききっていて、本当にとことん面白かったです。


inception_4.jpg


豪華で個性的なキャストがたくさん出演していますが、それぞれがキッチリと正しい仕事をしていて、
演出も演技もキャスティングもすべて正解というのも奇跡のような作品です。
あまりにも全員が素晴らしいせいで、一応の主役であるディカプリオの影が薄かった気もしますが、
彼は最近こういう、奥さんを亡くしてどうかなる作品が続いてるということもあって、
ミスキャストのようにも言われていますが、だからこそ彼の"痛み"はわかりやすくもありました。
彼の"眉間にシワ寄せ"演技はもう彼のスタイルとして確立してると思うし、
もはやアル・パチーノが何をやってもアル・パチーノなのと同じ域なんじゃないか(!)と思うようになりました。
でも、そろそろほかの顔も観てみたいですが。"やればできる子"なハズだし。

それからほかのメンバーの背景なんかももうちょっと描かれると良かったかな、と思いました。
それだと何時間あっても足りないかもですが。
アーサーはどうしてコブの助手的な立場になったのか、彼はそもそもどういう人なのか、
あの活躍ぶりを見ればいろいろ知りたくなるってものです。
ジョセフ・ゴードン=レヴィットが今作ですっかり株を上げてしまったのが、
嬉しいような複雑な気持ち・・・でもヘタに『(500)日のサマー』で人気が出て、
アイドルっぽく扱われるのよりは良かったかなあと思いますが。
彼といちゃいちゃ(?)するトム・ハーディもすごく良かった。
そして我らが謙サン!後半瀕死の状態になってしまってあまり活躍しなくなるのが残念ですが、
最初の方の銃撃戦とか夢を見破るシーンの迫力とかまったく引けを取ってません。
世間的には監督の嗜好なのだ、という結論みたいですが男性陣はとにかく全員カッコイイ!
彼らのスーツ姿のキマリかたといったら!それに引き換えエレン・ペイジのスーツ姿、
というかあの戦後のOLさんみたいな髪型は可哀相過ぎでした。
と、こういうどうでもいいミーハーな部分も楽しめる、本当に盛りだくさんの大傑作。
なんとかもう一回劇場に行きたいし、それと早くメイキング満載のソフトを出して欲しい!
21世紀のフレッド・アステア!と言えそうな、あのアーサーの無重力シーンなんて、
いったいどうやって撮ったのかとか、知りたいことがいっぱいです。
ディレクターズカットとか言って4時間ぐらいに伸ばしてくれてもいい!


Inception(2010 アメリカ/イギリス)
監督 クリストファー・ノーラン
出演 レオナルド・ディカプリオ ジョセフ・ゴードン=レヴィット エレン・ペイジ
   トム・ハーディ 渡辺謙 ディリープ・ラオ キリアン・マーフィー トム・ベレンジャー
   マリオン・コティヤール ピート・ポスルスウェイト マイケル・ケイン ルーカス・ハース




インセプション Blu-ray & DVDセット プレミアムBOX (初回限定生産)

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  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: Blu-ray






音楽にもアッと驚く秘密が隠されている!

インセプション

インセプション

  • アーティスト: サントラ
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2010/08/04
  • メディア: CD



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アイアンマン2 [映画感想−あ]

1作目の『アイアンマン』の感想は余裕がなくて書いてませんでした。
まあ、アメコミの知識も特別な思い入れもない私には、
ひたすら「ロバート・ダウニーいいわあ〜」という以外、
前作も今作も感想に違いはないような・・・といっても、
つまらないわけではもちろんなくて、今回もとても楽しく観させていただきました。


自らをアイアンマンであると公表したトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.)は、
ヒーローとして世界平和のために貢献しようとしますが、
国は彼のアイアンマン・アーマーを兵器と見なし、アーマーの引き渡しを求めます。
トニーは断固としてその要求を拒否しますが、そんな彼の前に、
ある理由で彼を目の敵にするロシア人イワン・ヴァンコ(ミッキー・ローク)が現れます。
さらにスターク社のライバル武器製造会社ハマー・インダストリーズの社長、
ジャスティン・ハマー(サム・ロックウェル)はそのヴァンコに接近。
ヴァンコにある計画を託しますが・・・。


社長
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アイアンマンの面白さは中の人であるトニー・スタークの人間臭い素顔。
とは言え超大金持ちかつ超天才である彼はそういう意味では十分スーパーマンなわけで、
親しみを感じるポイントは本来無いはずなのですが、
それでも、彼の行動のあまりにも無邪気というかやりたい放題なやんちゃぶりは、
純粋に愛らしく憎めないし、好き放題な生き方は単純に羨ましい。
しかし今作では胸のアーク・リアクターの副作用により体内に毒素がまわり、
すべて絶好調な様子の裏で徐々に死を意識し始めます。
無敵のトニー・スタークであっても抗えない事態。彼とて万能ではないということなのですが、
その結果ヤケになり飲んだくれ、例によってあちこち破壊しまくり、
ペッパー・ポッツ(グウィネス・パルトロウ)ら周囲を悩ませます。

そこに父親の代からの恨みを持って登場するヴァンコやライバル社の社長ハマーの登場、
さらに特殊機関S.H.I.E.L.D.のニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)が接触してきたり、
社長の座を譲ったペッパー・ポッツとの関係は微妙なまま、
そこに新しい秘書としてセクシーなナタリー(スカーレット・ヨハンソン)が登場したりと、
あらゆる問題が彼に降りかかり襲いかかって来ます。
けれどもそんなこんなはいろいろ盛り込みすぎな気がするし、
かといって社長八方塞がり!というほどの切迫感とかドラマチックさはあまり感じられず。
もうちょっとシンプルでもいいんじゃないかなと思ったんですがそうはいかないのでしょうか。
前作はアイアンマン誕生から最後のバトルへときちんとストンと落としてくれた感じでしたが、
2作目になるとこういうあれやこれやという展開は仕方ないのかも知れませんが。


秘書
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前作のエンドロール後に登場したS.H.I.E.L.D.のニック・フューリー。
彼の言う「アベンジャーズ計画」というのがこの時何のことかわからず、
"アベンジャーズ"と言えばレイフ・ファインズとユマ・サーマンの映画しか浮かばなくて、
ネットで調べて初めてふーん、そういうことなんだとようやくなんとなく理解しました。
おそらく2作目でいろいろ明らかになり細かい説明もあるんだろうなと思っていましたが、
これがほとんどその辺は承知のことという感じで話が進むので、
これって知ってて当然のことなのかなあと、ちょっとおいてけぼりな感じでした。
別にわかってなくてもそんなに困らないとは思うのですが、
こういうところは基本的な知識が無いのは困りものなところです。
そのためS.H.I.E.L.D.の工作員であるナタリーの存在は重要な役なんだと思うんですが、
常に胸元を強調した服や、最後はピタピタのジャンプスーツで戦っちゃったりするんで、
単なるお色気要員なんじゃないかと思ってしまったり。
実際彼女はナイスバディだし、メイクもバッチリで女の私から見ても目の保養!でしたが。
やっぱり女性がグウィネス・パルトロウと、あとはヴァニティフェアの記者の人ぐらいじゃ、
男性客に対してサービスが足りないということでしょうか。


ライバル
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ヴァンコは両手に持った長い電子鞭?をブルンブルンしながら、
まるでスキップでもするように楽しげ?にF1カーを斬りまくるシーンが、
予告編で見るたびにうわあと思って楽しみにしてたんですが、
予告編であれだけ見せるということは、これがメインのバトルシーンなんかじゃないわけで、
ブルンブルンの登場の後、彼はすぐに裏方仕事に回ってしまいます。
『アイアンマン』ではいろんないわゆる"アーマー"というパワードスーツが登場しますが、
トニー・スタークが身に着けるアーマーは常に改良を重ねられて、
どんどん進化し、スタイルも変わっていくので、
バットマンやスパイダーマンのようないわゆる"変身後"のキメのスタイルがハッキリしてなくて、
そこがヒーローものとしてはちょっと不思議な気がします。
ハッキリしたスタイルがないことに対しては特に気にしなくてもいいのか・・・というのか、
いろんなパターンのアーマーが登場することが、ファンにとっては嬉しいポイントなのでしょうか。
このあたりの良さが私にはよくわからないので、終盤マスクを被っての戦いが始まると、
それぞれの"中の人"の顔が映し出されるとはいえ「う〜ん?」と思ってしまいます。
だから最初のヴァンコのアーマーの、マスクもなくほとんど鞭だけというシンプルさが、
敵キャラとしてハッキリしていて面白いなあと思ったのでした。

というわけでバトルシーンに個人的に面白さを感じられない分、
それ以外のトニー・スターク素のシーン、お馴染みの作業場で何かを作ってるところや、
冒頭のスタークエキスポで美女に囲まれキメポーズを取ったり、
かと思うとドーナツ屋の屋根の上でぼそぼそとドーナツ食べてるのとか、
そんなこんながいちいち楽しくて仕方ない。
これやっぱりダウニーいいわあとひたすら彼に萌える作品ということでいいんですよね。
ああ私も彼にアヤシイ料理を作ってもらいたい!


敵(と、俺の鳥?)
ironman2_2.jpg


今作から参戦のサム・ロックウェルとスカーレット・ヨハンソンは、
個人的に必見なキャスティングだったので単純に嬉しくて、
逆にローズ中佐役がテレンス・ハワードからドン・チードルに変わってしまったことが、
彼も今回アーマーを来て戦うことになるので前作より活躍が増えるのに・・・と残念。
ドン・チードルも好きな俳優なんですが、この役にはちょっと真面目過ぎるというか、
テレンス・ハワードのちょっと軽い雰囲気のほうが合ってると思いました。
サム・ロックウェルのハマーというキャラクターはどういう位置づけなのか、
原作でも元々こういう小物な感じなのかどうか知りませんが、
どれほどの悪人でありトニーの敵なのかわかりにくく、もうちょっと強烈な悪人ぶりか、
あるいはいっそのこと情けない小物ぶりを発揮しても良かった気がします。
だって黒メガネ+スリーピース姿のサム・ロックウェルは単純にカッコよすぎる!(個人の感想です)

今回もエンドロール後に次への布石シーン(と思われる)があるのですが、
またまたわけがわかりませんでした。
でも正直言ってストーリーとかどうでもいい。トニー・スタークがトニー・スタークであれば!
それにしてもロバート・ダウニー・Jr.がこんな風に力の抜けた良い役者になるなんて。
あちこちで言われてることですが、彼はドリュー・バリモアと同じ、
一度行くところまで行った人は強いという典型例、というかこうなるべき理想形、なのかな?
というわけで『3』を早く観たいです。期待しています!
そう言えば今回、監督のジョン・ファヴローは登場シーンが多くて、
俳優としての彼が好きな者としてはこれも嬉しかった!
次はもっともっと楽しませてください!


Iron Man 2(2010 アメリカ)
監督 ジョン・ファヴロー
出演 ロバート・ダウニー・Jr. ドン・チードル スカーレット・ヨハンソン
   グウィネス・パルトロウ サム・ロックウェル ミッキー・ローク
   サミュエル・L・ジャクソン クラーク・グレッグ ジョン・スラッテリー
   ジョン・ファヴロー ポール・ベタニー レスリー・ビブ





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アリス・イン・ワンダーランド [映画感想−あ]

最初にこのスチールを見た時にはものすごく興奮したんですが、
公開が近づくにつれ、なぜかテンションは下がっていくばかり。
まあでも、やはりティム・バートンの新作と聞けば観に行かないわけにもいかず、
そろそろ人も少なくなってきた頃だろうしと、重い腰を上げて観て来ました。
悩んだ末の3D字幕版にて鑑賞。


不思議の国での冒険から13年、19歳になったアリス(ミア・ワシコウスカ)は、
母親とともにアスコット卿(ティム・ピゴット=スミス)の園遊会に招かれますが、
実はそれは彼の息子のハーミッシュ(レオ・ビル)が、
アリスにプロポーズするために仕組まれた会でした。
急なことに戸惑うアリス。するとそこに懐中時計を持った白うさぎが現れます。
アリスはその場から逃げ出し、白うさぎの後を追います。
するとその先には大きな穴が。おそるおそるのぞき込むとそのまま穴に落ちてしまい、
たくさんのドアがある小部屋にたどり着きますが・・・。


落っこっちゃうよ
aliceinwonderland_1.jpg


キャストが発表された時、アリスがどうしてこんなに大人なの?と不思議だったのですが、
今作ではアリスがワンダーランドに迷い込んだ6歳の時から13年後という設定で、
6歳の時と同じように穴に落ちてふたたび不思議の国を体験、
そこであらゆることを経験し、学び・・・という、なんとアリスの成長物語になっています。
一度経験しているはずの小さくなる薬や大きくなるケーキに苦労してしまうのは、
アリスが昔のことを記憶しておらず、すべては夢だったと思っているから。
なので物語としては"その後"なのですが、原作やディズニーアニメなどでお馴染みの、
エピソードやキャラクターたちがうまい具合に登場します。
(でも、私はアリスと言えば彼女が巨大化して小屋の窓から手足を出す絵が印象的で、
あれが出てくれないかなあと期待したんですがそれはありませんでした。残念。)

そんなお馴染みのキャラクターやエピソードが、
新たにティム・バートン風味に味付けされ登場するのは、見ていて単純に楽しい。
またハートのジャック(演じるのはなんとクリスピン・グローヴァー!)のような、
この作品オリジナルのキャラクターも登場して、これまたなかなか魅力的。
ところが、なぜか観ていて思ったほど心が躍らないのです。
事前にスチールで見ていたマッドハッター(ジョニー・デップ)、
赤の女王(ヘレナ・ボナム=カーター)、白の女王(アン・ハサウェイ)は、
ちょっとチカラ入り過ぎなんじゃないの?という作り込みぶりで、
どんなスゴイことになるのかと期待していましたが、
これが意外とあっさりしているというか、狂いっぷりが物足りないというか、
予告編やスチールで観た以上のものは感じられず。3Dなのに!


帽子のない帽子屋
aliceinwonderland_2.jpg


ティム・バートン作品といえば独特のダークな世界、キャラクター造形などが魅力的で、
今回も赤の女王の巨大な頭なんてさすがに強烈だなあと思ったんですが、
そんな"ティム・バートン印"はちらほらと見えはするものの、
ストーリー展開も含めてかなり"普通"で、どうしても引き込まれるものがありませんでした。
これは『チャーリーとチョコレート工場』の時も感じたのですが、
毒っぽさというのか、どこか皮肉めいたような部分がないこともないのですが、
チョコレート工場もアリスも、どちらもクレイジーなストーリーと登場人物で、
ティム・バートン的世界にとても合いそうなのに、想像したよりもはるかにおとなしめ。
なんとなくうまくまとめようとしているような、最後は人情ドラマに持って行こうとするような、
それはそれでもいいのだけれど、もうちょっと毒々しい部分を見せて欲しかったなと思いました。

今回は当然主人公はアリスなのですが、実質ジョニー・デップがメインであることは、
彼の名前がトップに登場することやポスターのデザインからもわかることで、
それはジョニー・デップという名前の大きさ、ティム・バートンとの関係など、
様々な理由はあると思いますが、彼にアリスを演じさせるわけにはいかないのなら、
(インタビューでは"ティムにアリスをやれと言われればやるよ!"なんて答えてましたが)
マッドハッターというキャラクターをオリジナルよりはるかに大きくする必要がある。
そうすると、単にどこかネジのゆるんだ不思議の国の住人というだけではいられなくなって、
その結果、誰よりもアリスを信頼し、導いて行く"まっとう"な役となり、
それがそのまま"つまらなさ"に繋がってしまったような気がします。
ただただ"なんでもない日"をお祝いしていたり、自分のことばっかり喋ってたりして欲しかった。

赤の女王は一番狂ってる感を出していそうで、単なる暴君の域を出ていないような。
大きい頭と派手なメイクに騙されそうだけど、何度も素の表情が見えて、
まあでも、そこが面白かったと言えば面白いキャラクターではありました。
それよりは白の女王が、何も知らないお姫様のようで一番残酷というのが、
『オズの魔法使い』における北の魔女の、良い魔女だけどどこか冷徹な感じに似ていて、
全身真っ白という以外、ほとんどいつものアン・ハサウェイなのに、
一番フリーキーだったかも知れない。彼女はすごく良かったです。


かなりバートン風味
aliceinwonderland_3.jpg


ほかに、奇妙な双子の顔がどこかで見たようなと思ったら、
『リトル・ブリテン』のマット・ルーカスだと最後に知って納得。そのまんま!
第一声ですぐにわかる青い芋虫のアラン・リックマン、
チェシャ猫はスティーヴン・フライ、白の女王の家来犬がティモシー・スポール、
最後にアリスが戦いを挑む(!)恐竜ジャバウォッキーがクリストファー・リーと、
声の出演にイギリスの名優をずらりと揃えたところも、まあ実に贅沢というかなんというか。

さて今回、初めてワーナーマイカルにて3D鑑賞したのですが、
メガネの軽さと一回使い切りで持ち帰りできるのはちょっと嬉しかったのですが、
評判ほどの映像とは・・・これがかなり残念なものでした。
全体にピントが甘く、暗く、結構なストレスを感じながらの鑑賞でした。
ワーナーで採用している方式は確か評判が良かったと思ったのですが、
ということはこれはもしかしたら何かのトラブルなのか、
それとも私の視力の問題なの?などいろいろ考えましたが、
どこにクレームを付けていいのかもわからないし、
プラス料金を払ってこれとは・・・と、本当に本当に残念でした。
ほかの劇場やほかの3D方式のものと比べる必要があるのかも知れませんが、
そんな時間も金銭的にも余裕はありません。


赤の女王とかわいそうなカエルさんたち
aliceinwonderland_4.jpg


TOHO系の重い3Dメガネはどうしてもイヤだったし、IMAXまで行く元気も余裕もなく、
本当は2Dで観たかったのですが、2D上映しているところは驚くほど少なく、
その上、私の行けそうな2D上映館は吹き替え版ばかり。
確かに劇場としては3D上映できるのであればそのほうが儲かるのかもしれないし、
世は3Dブームなのかもしれないし、でももう少し選択の余地があってもいいのではないかと思いました。
3Dを巡る状況は今はまだ始まったばかりと言ってもいいし、
この先どうなるかわかりませんが、もう少しいろんなことが改善されるのを期待したいです。
2D上映もあるのに場所によっては3Dしか選択できないというのは、
料金を余計に払わされるということも含めてかなり不公平。
それでこんなに不安定で不安要素が多いのでは、今後は手を付けるのに躊躇してしまいます。
そこで決めました。3Dは可能な限り避けよう、2Dで観れるならそちらを優先し、
あとはパッケージ化されるのを待とう、と。もちろん作品にもよると思います。
『アバター』のようなものは3Dで観るべきものだったと思うし。

話をアリスに戻すと、今作での3D効果はほとんど感じられず。
ちょっとこれみよがしな感じも受けて、せっかくのティム・バートンなんだから、
ストレートに自分の映像美のようなものを貫いて欲しかったです。
私の最悪な鑑賞状況のせいだったかも知れませんが、
全体にスケールが小さくちまちました印象を受けたし、
これが3Dにするためにそういう風になってしまったのか、
そもそもが失敗作なのかはわかりませんが、
ストーリー展開のつまらなさも併せて、もう少しなんとかならなかったものかと。
もう一度、2Dのきれいな映像で観て判断したいと思いました。
ティム・バートンに過度な期待をする方が悪いのかな?
でも彼に何度も楽しませてもらった者としてはどうしたって期待してしまいますからね。


Alice in Wonderland(2010 アメリカ)
監督 ティム・バートン
出演 ミア・ワシコウスカ ジョニー・デップ ヘレナ・ボナム=カーター アン・ハサウェイ
   クリスピン・グローヴァー マット・ルーカス スティーヴン・フライ
   マイケル・シーン アラン・リックマン バーバラ・ウィンザー
   ポール・ホワイトハウス ティモシー・スポール ティム・ピゴット=スミス
   レオ・ビル クリストファー・リー



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