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17歳の肖像 [映画感想−さ]

以前どこかで今作の主演キャリー・マリガンの写真を見て、
そのなんとも愛らしい表情が気に入ってしまい、
それに相手役のピーター・サースガードも大好きなので、
早く観たくてしょうがなかった作品です。
そんな若干ミーハーな気分も最後はどこかへ行ってしまうぐらい、
これは本当に素晴らしい。ここまで良い作品だとは思ってませんでした。


1961年、ロンドン郊外トゥイッケナム。
16歳の高校生ジェニー(キャリー・マリガン)は成績優秀な少女で、
両親(アルフレッド・モリーナ、カーラ・セイモア)は彼女が、
オックスフォード大学へ進学することを期待していました。
ジェニーはその期待を受けて勉学に励みながらも、
映画やシャンソンなどを通してフランスに憧れ、
大学へ進学してからの自由な生活を夢見ていました。
ある雨の日、ジェニーはチェロの練習の帰り道で、
年の離れた男性デイヴィッド(ピーター・サースガード)に声をかけられます。


フランス人になりたい
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キャリー・マリガンがオードリー・ヘップバーンの再来なんてことを言われているそうで、
確かにこの作品での年上の男性との恋、パリに行ってどんどんおしゃれになって・・・等々、
それだけ聞くとイメージとしてはヘップバーン作品のようではありますが、
しかしこれはそんな甘いラブストーリーなんかじゃ決してありません。
それにしても今考えるとヘップバーンが出演した50〜60年代のアメリカ映画は、
不自然なぐらい、年齢差カップルの恋物語を描いていました。
ヘップバーンのお相手はグレゴリー・ペック、ハンフリー・ボガート、ケーリー・グラントなど、
いずれも彼女より10歳以上は年の差がある人ばかり。
昔のハリウッド映画にこういう年齢差カップルが多かったのは確か何か理由があったと、
以前どこかで読んだ記憶があるのですが何だったかな?
当時、映画で描かれる理想の男は必ず大人でなくてはならず、
女優には今以上に若さが求められていた・・・みたいなこともあったみたいですが。

ところがこれを今の時代に描かれると(といっても今作は1961年の設定ですが)、
なんとなく不自然さを感じ、デイヴィッドは単にロリコンなのか?とか、
下世話な感情がチラッとかすめてしまったり、どんなウラがあるんだろうと思ったりと、
最初は単純にラブストーリーとして受け入れていく気持ちにはなれませんでした。
昔のハリウッド映画ならそんな風には思わないのに、不思議です。
もちろん今作の2人も純粋に互いに惹かれ合い恋愛へと発展していくのですが、
ヘップバーン作品のようなハッピーエンドになるとは思えない不穏さを感じていました。
なぜこんなに違う印象を持ってしまうのでしょう?
おそらく昔の映画は浮世離れな感じがして現実味がなく、
そのせいで普通に夢物語として受け入れられたのかも知れません。
それにキャリー・マリガンとピーター・サースガードには、
今の時代のリアルさや生々しさを感じてしまうのかなとも思いました。


いろんなことを教えてあげたい
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不思議だったのは娘よりはるかに年の離れた、どこから現れたかもわからない、
デイヴィッドという男のことをジェニーの両親があっさりと受け入れることです。
おそらくデイヴィッドは最初からキチンと両親に挨拶したりして誠実さを感じさせる。
話も上手いし、お世辞言ったりとか調子良さそうなところもあるけど口先だけの男には見えない。
両親には彼がキチンとした"紳士"に見えたのかも知れません。
ジェニーの父親は娘をオックスフォードに行かせようとしているけど、
もしこの男が娘と結婚してくれるのならそれもいい、いやむしろそのほうがいいと思ってしまう。
こういうのはこの時代の、そしてお国柄もあるのかも知れませんが、
まだ女は社会に出るより家庭に入る方が良いと思われていたのでしょう。
良い大学を出て教師などの安定した職に就くか、幸せな結婚をする。父親にはその二択しかない。
でもその二択の間や周りには、良い音楽や見知らぬ文化や、あらゆる楽しみ、幸せがある。
そのことをジェニーなど若い世代は良く知っているので強烈にそれを求めてしまう。
そのへんの世代間のギャップのようなものがすごく面白かった。
でも父親のこの頭の固さが、デイヴィッドの怪しさを見抜けない不幸にも繋がっていて、
父親の娘への愛情の向け方が間違っていた、と言ってはあんまりなんですが、
親ってこういうものなんだろうな、というのが痛いほど伝わって来ました。
母親は父親よりもう少し娘の気持ちを尊重しようという柔軟さがあるんですが、
それでも娘が夜遅く帰るのを台所で一人、鍋のコゲを取りながら待ってるのとか、
なんだかイヤでも自分の母親が重なって見えてしまって胸が痛くなってしまいました。


娘を幸せにしたい
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ジェニーを取り巻く大人たちの中でもう一人印象的なのが、
ジェニーが通う高校の教師、スタッブズ先生(オリヴィア・ウィリアムズ)。
すごく真面目で堅そうで、成績優秀なジェニーを気にかけていて、
だから彼女がどんどん道をはみ出していくことをすごく心配している。
そのためジェニーと先生は対立してしまうことになります。
ジェニーの言動に先生のほうが傷ついてしまったりもするのですが、
最後には心が通じ合う出来事が起こります。
この先生の存在も、ジェニーが大人になるための大事な一人。
こんな素敵な先生がそばにいたことはジェニーにとってとても幸せなことだったと思います。

一方、ジェニーを悪い?大人の方へ導いてしまうのがデイヴィッドと、
その友人のダニー(ドミニク・クーパー)とヘレン(ロザムンド・パイク)。
この友人カップルも面白い存在で、特にヘレンはなかなかに強烈です。
彼女はいったい何者なのか謎なのですが、物事を深く考えない、
その時さえ楽しければいいという感じで男たちと行動を共にしている。
出会った瞬間からジェニーを妹のように可愛がり、性格はすごく良さそうだけど、
おそらくお勉強はまったく出来なさそうというのが、いろんな彼女の言動でわかります。
この、いい人だけど頭は空っぽのヘレンというキャラクターを、
ロザムンド・パイクはすごくうまく演じています。
ホント、この人は魅力的な女優さん。ちなみに彼女とキャリー・マリガンは、
『プライドと偏見』では姉妹の役を演じていました。


楽しいことだけしていたい
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イギリスのジャーナリスト、リン・バーバーの自叙伝が原作。
これを『ハイ・フィデリティ』や『アバウト・ア・ボーイ』のニック・ホーンビィが脚本化。
情けない男を書かせたらこの人の右に出る者はいない!のニック・ホーンビィらしさは、
デイヴィッドという男の描き方に集約されていると思います。
ピーター・サースガードが演じている時点で、このデイヴィッドが、
決してグレゴリー・ペックじゃないだろうことは予想されるのですが、
単にどうしようもない男というだけじゃない、デイヴィッドの純粋さのようなものを、
この脚本とサースガードの演技が素晴らしく表していると思いました。
罪作りなヤツなのに憎めない。本当にこういう男はキケンです!
そして父親役のアルフレッド・モリーナもまた素晴らしく情けない。
娘を愛するが故のどうしようもない頑固さ。彼の佇まいはどのシーンもジンと来てしまいます。

原題の『An Education』=「教育」というその言葉は、
高校での授業や大学受験に向けての勉強、大学へ入ってからの勉強から、
人が成長するために受ける教育、そして人を導くための教育など、
いろいろと形や意味を変え、あらゆる人が口にすることになります。
人は何のために教育を受けるのか、他人を教育するのか。
学生時代はまさにその言葉と共に過ごしているはずなのに、
おろそかにしがちだったり、その存在意義に疑問を持ったりします。
ジェニーは苦手なラテン語の教科書に向かっているよりもっと大切なものがあると思った。
目の前に出された魅惑的なものたちにまっすぐに惹きつけられてしまった。
私もやはり十代の頃は好奇心に満ちていたし、刺激を求めていたと思います。
ジェニーのようにお勉強は出来なかったけれど、だからこそ、
世の中には学校に行くより大切なことで溢れていると思っていました。
60年代初頭、今よりはるかに情報の少ない時代、
ジェニーの目の前に現れた”大人の世界”はどんなに光り輝いて見えたことでしょう。
けれど、キラキラと魅惑的なものを簡単に手に入れる近道はなかったことにジェニーは気付きます。
しかし彼女の体験したことは痛みも伴ったけれど、十分に"an education"だったと思います。

今でもジェニーの年代の人たちにはこの映画の言わんとするところはやっぱり通じにくいでしょう。
刺激を求めていたティーンの時代を"あの頃"と思える世代には、痛くて眩しい物語。
本当に良い作品でした。今年観た中で現時点ではトップと言っていいぐらい。
キャリー・マリガンの素晴らしさと共に、ぜひ楽しんで欲しい作品です。


An Education(2009 イギリス)
監督 ロネ・シェルフィグ
出演 キャリー・マリガン ピーター・サースガード アルフレッド・モリーナ ドミニク・クーパー
   ロザムンド・パイク オリヴィア・ウィリアムズ エマ・トンプソン カーラ・セイモア
   マシュー・ビアード サリー・ホーキンス



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ぷーちゃん

きっちり読ませて頂きました。(⌒-⌒)
うちの手抜きブログと違って、文章の中身が濃い。
映画通のdorothyさんの知識には、脱帽です、
と言うより、巷にある雑誌等のレビューよりも
有益なので参考に致します。
この映画、かなりポイントの高い映画の様で。
これも観たいけど。何から手をつけたらいいのか。
♪(* ̄∇ ̄)/って感じです。
by ぷーちゃん (2010-04-29 21:52) 

dorothy

ぷーちゃんさん、こんにちは・・・って、どこが手抜きブログですか!?
ぷーちゃんさんの特に音楽関係の知識の広さ&深さにはいつもホエ〜となってますよ!

音楽と言えばこの作品は音楽もすごくいいのでぷーちゃんさんにも観て欲しいです。
あ、DVDになってからでいいですよもちろん!
by dorothy (2010-04-30 00:38) 

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