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マイレージ、マイライフ [映画感想−ま]

人付き合いを厭わない人にはなんてことないことでも、それを苦手としていたり、
あえて避けて生きていきたい者にとっては、日々の生活は生きづらく、すべてが戦い。
でも、自分は本当に人が苦手なのか、嫌いなのか。
本当は誰かのぬくもりが欲しいのではないか。
求めて拒まれることが怖いだけではないのか・・・なんてことを、
ラストのジョージ・クルーニーの表情のあと、ずっと考えていました。


雇い主に代わってリストラ対象者に解雇通告を出す、それがライアン(ジョージ・クルーニー)の仕事。
そのため彼は年間322日全米を飛び回る、独身の気ままな生活を送っていました。
しかしそんな彼の生活に変化をもたらす、2つの出会いが訪れます。
1つは、出張先でのアレックス(ヴェラ・ファーミガ)というビジネスウーマンとの出会い。
そしてもう1つは入社したばかりの新入社員ナタリー(アナ・ケンドリック)。
ナタリーは、現地に赴くことなくネットを通じて解雇通告を出すという新しいシステムを提案。
経費削減のためボスのクレイグ(ジェイソン・ベイトマン)はそれを導入しようとしますが、
それが採用されればライアンの出張生活は終わりになってしまいます。
ライアンは必死に新システム導入に反対。しかしクレイグはライアンにナタリーの教育係を任命。
出張に彼女を連れて行くことになり・・・。


新人
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会社勤めをしている人なら、こういう話はどこかしら身につまされたり、
人ごとではないと思う人も多いのではないかと思います。
それにしてもいきなり「すぐに荷物をまとめて帰ってください」なんて言われるものなんですね。
そして、こんなリストラ請負人なんていう仕事があるとは。
まったく知らないヨソ者がやって来て、クビを告げられるというのは驚きです。
確かに言い渡す人のことを考えれば、同じ会社の人のクビを切る仕事というのは確かに荷が重いでしょう。
でも、言われるほうの身になってみれば、宣告されるそのこと自体あんまりな話なのに、
それをどこの誰だかわからないヤツに言われるなんて。
私なら、そんな会社こちらから辞めてやる!と言いそうですが・・・。

そんな仕事を実に淡々とこなすライアン。
人との接点を出来る限り持たないで生きている彼にとって、これはなかなか向いている仕事のよう。
けれど、新人のナタリーが提案した新システムを彼は受け入れようとしません。
それは、そのアイデアが採用されれば彼の生活そのものと言える「出張」がなくなってしまう。
一つの場所に留まらされる暮らしなど、もう何年もしていないし、
常に機上の人となって雲の上にいることが彼の日常であったのに、そうではなくなってしまう。
もちろん、せっせと貯めていたマイレージも貯められなくなってしまう!
そんな自分の日常が脅かされると思ったのでしょう。


家族
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彼はナタリーを出張に連れて行き、その”現場”を彼女に見せ、体験させます。
そこで何が起こるのか、呼び出された社員がどのように部屋に入って来てどんな風に座り、
どこを見つめ、何を語るのか、そしてどうやって部屋を出て行くのか。
人々のそんなひとつひとつのこと、その場に流れる空気を彼女に感じさせます。
そうすることで何とか彼女に新システムを思い留まらせようとしたのでしょう。
そしてそこで彼女はいくつかのミスを犯してしまうのですが、
ライアンは彼女を慰め、その尻ぬぐいをするうちに、彼も何かを感じ始めます。
彼はおそらく自分でも自覚のないまま、実際に相手と向き合うことの大切さ、
それらをすべて受け止め、どう"対処"していくかの大切さを感じていたのだと思います。
人と深く接することがないからこそ、かえって相手の立場や心情がわかるのかも知れない。
人と人が関わり合うことの複雑さを感じてしまいました。

さらにライアンの平和だった日常が侵される事態に直面します。
まずアレックスという、まるで自分の分身のような存在に出会う。
考え方や価値観が驚くほど似ていて、だから一緒にいてとても居心地がいい。
彼にとって、そんな存在に出会ったのは初めてのことだったのかも知れません。
そしてもうひとつ、これまで避けてきた家族との接点を持たなくてはならなくなる。
妹の結婚のために、彼は日頃とはかなり違う"説得"をするハメに合います。
しかしそれは、彼自身の家族に対する考え方を大きく変えさせてしまいます。
そして同時にその場にいたアレックスに対する思いも変わってくる。
これまで意識的に避けてきたことを求めようとします。


恋人?
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そしてライアンはこれまでの生き方を改め、愛を求めるようになる・・・と、
普通ならなりそうなところですが、そう簡単にはいきません。
ライアンがやっと信じられるように思えた人の温もり、
ずっと避けてきたものが信じられそうに思えた時に、彼が取った行動とその結果。
そして、欲しくてしょうがなかった1,000万マイルを手にする時、
映画の始まりの頃の、自信に満ちた、自分しか信じないライアンはすでにいなくなっている。
若い時ならば、こんな経験も勉強だとか成長だとか納得して前に進めるかも知れません。
けれど、彼のような年齢になってこんな風に考え方を変えさせられるというのは、
かなりキツイことだと思います。
その戸惑いの表情、本当にジョージ・クルーニーが上手い!
この人は本当に、いつでも何の役でもジョージ・クルーニーそのままのようで、
でも、どれもこれもうまく役になりきってるんですよね。

ヴェラ・ファーミガとアナ・ケンドリックも、オスカーノミネート納得の好演でした。
特にアナ・ケンドリックは、こういうお勉強が出来てやる気満々で・・・な女の子、
いるいる!すっごく知ってる!と、観てる間ずっと思ってました。
典型的現代のネット世代の子で、ドライかと思えば素直に愛を信じていたりもして、
傷ついてボロボロになったりとか、本当に可愛く愛らしかったです。
ほかにもライトマン監督作の常連ジェイソン・ベイトマンとJ・K・シモンズ、
特にJ・K・シモンズはほんのちょっとの登場なんですが、さすがの存在感。
あと、ダニー・マクブライドがいいですよ〜!

『サンキュー・スモーキング』『JUNO/ジュノ』そして今作。
ジェイソン・ライトマンはこれまで傑作しか撮っていない。
彼の作品は、人が生きていく上で経験する苦い思いを描き、
そして人の温かさも忘れない。けれど安易なハッピーエンドにもしない。
でも決して冷たく突き放すようなこともなくて、すごく細かい、
人と人の触れ合う時の空気のようなものを感じさせてくれる気がします。
若いのにどうしてこんな視点が持てるのだろう。驚くばかりです。


Up in the Air(2009 アメリカ)
監督 ジェイソン・ライトマン
出演 ジョージ・クルーニー ヴェラ・ファーミガ アナ・ケンドリック
   ジェイソン・ベイトマン エイミー・モートン メラニー・リンスキー
   J・K・シモンズ サム・エリオット ダニー・マクブライド



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コメント 2

ぷーちゃん

素晴らしいコメントです。
by ぷーちゃん (2010-04-06 22:55) 

dorothy

ぷーちゃんさん、そんな直球なw
by dorothy (2010-04-07 02:07) 

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