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(500)日のサマー [映画感想−か]

「これはラブストーリーではない」そう言ってこの物語は始まります。
とは言ってもこれはラブストーリー以外の何ものでもない、正確に言えば恋愛についての物語。
一見ポップな映像と音楽でオシャレ映画のようなフリをしながら、
意図的な"時系列バラし"で痛みと甘さを交互に繰り出す手法に、
傷だらけにされること必至の傑作です。


グリーティングカード会社で働くトム(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は、
同じ会社で働くサマー(ズーイー・デシャネル)と付き合っていましたが、
最近彼女との関係がうまくいかなくなり落ち込んでいました。
友人たちになぐさめられても立ち直れないトム。なぜこんなことになってしまったのか?
トムはサマーと初めて出会った日を思い出し、理由を探し始めます。


(Day 59)
500days_of_summer_3.jpg


何度も当ブログで触れてきたように個人的にものすごく期待していた作品。
既に観た人、特に男性陣の衝撃の受け具合が尋常じゃなくて、
いったいどんなことになってるのかと思えば、確かにコレは相当にキツイ。
ラブコメディなんて言葉で安易に片付けられるようなものではありませんでした。
主人公が男であるため、どうしても男性の方が身につまされるようですが、
これ、男女が逆転したって十分つらいだろうし、
誰でも一度は程度の違いはあっても似たような経験をしていそうな話です。

運命の恋を信じるトムと信じないサマー。
恋愛に対する考え方や思いは人それぞれで、そこに正解も間違いもない。
恋愛の成立に同じ価値観や嗜好などがどれほど必要なのかもわからないけど、
この広い地球上でいろんな条件をクリアして2人の人間が出会って恋に落ちるなんて、
確かに奇跡と言っていいぐらいかも知れない。それなのに誰もが容易に恋に落ちているけれど。
こんなに誰かを好きになるなんて!こんなに誰かに愛されるなんて!
けれどそんな幸せな日々も長くは続かず、どちらかが、あるいは両方が互いに興味を無くしていく。
そんな恋愛の実態をサマーはすでになんらかの形で知っていて、
だから愛なんて信じない、信じたくないと思っていたのかも知れない。
・・・でも本当のところは何も知らなかったのだけど。
一方トムは恋愛の何たるかを知ってか知らずか、真っ直ぐに運命の恋を信じて疑わない。
サマーに「本当の愛を知らない」と言うけれど、トムだって知っていたとは言えない。


(Day 31)
500days_of_summer_1.jpg


サマーが2人の間に引いていた「友だち」という線。
キスもしてセックスもして、同じ時間を共に過ごす2人は普通なら誰が見ても恋人同士。
これが友だち同士というならサマーにとってそれ以上とは?
きっとサマーはその友だちの先を考えたくなくて、ダメになってしまった時に傷つくことが怖くて、
考えることをやめて、そして「運命の恋なんて信じない」という人になってしまっていたのかも知れません。
そんなサマーの気持ちや、どうしてそんな行動を取ってしまうのかが、
私にはズキズキと胸が痛くなるほど伝わって来てしまいました。
「サマーが理解できない」とか「ビッチだ!」などという意見もあるようですが、
私は彼女の行動で理解できなかったところは1つもなかったと言ってもいいぐらいでした。
女がみんなサマーみたいだとは思わないけれど、それほど特別でもないんじゃないでしょうか。
やはり女のほうが感情的に動いてしまいがちだろうし、逆に冷静さも持ち合わせている。
そんな女に振りまわされる男性は気の毒だなあと思いますが。

私がものすごく身につまされ胸が痛くなったところは、
映画『卒業』を観てサマーが号泣するところと、バーで見知らぬ男に絡まれてからの一連の出来事です。
『卒業』での号泣はその瞬間は「ここまで泣くか?」とトム同様とまどうぐらいなんですが、
後になってその時のサマーの心理を思うと、ああ苦しかっただろうなあと本当に胸が痛くなりました。
自分の感情をどうすることも出来なくなるぐらい映画で泣くというのはたびたびあります。
完璧に自分と重なってしまうつらさ。これを今、この人と観てるなんてという思いも相当につらい。
バーのシーンは男が絡んで来る前のトムの言動から完全にトムは間違ってしまっているし、
この流れでの"よかれと思って"の行動は、冷める、と言ってしまってはあまりにトムが不憫すぎるけど、
サマーにとっては自分でもどうすることも出来ないぐらい、
トムに対して重い扉を閉めたくなってしまった瞬間だったと思います。
トムが出ていってしまった後のどうしようもないモヤモヤ感と、結局自分が折れるしかない歯がゆさ。
どうしてあんな風に言ってしまったんだろうという後悔ももちろんあるし、
ここで自分が折れたほうがいいという"計算"(というと語弊があるんですが)もあったりする。
トムにしてみたら本当に災難なことだと思い、同情してしまいますが、
これはもうどうしようもない感情だと思いました。
もう、こういうこと私もありました。本当に。


(Day 141)
500days_of_summer_2.jpg


トムの純粋さは悪いことではないと思います。多少罪作りではあるかも知れないけれど。
彼は本当に単純にサマーのことが好きだったと思うし、私もサマーの気持ちがわかると言いながらも、
あんな風に真っ直ぐに想われたいなあとも思いました。
けれどやはり恋愛とは、人を愛し愛されるということは、単に楽しい時間を過ごすことや、
同じものを好きだったり笑っていたりするだけではないと思うし。
サマーはあえて先を考えないようにしていたけれど、
実はトムだって今があまりに楽しくて、これから2人はどうなっていくのか、
本当のところは考えてはいなかったんだと思います。
もう永遠に、この楽しい時間が続くのだと思っていたんじゃないのでしょうか。

・・・とまあ、あれこれ思いを巡らせてしまいましたが、
本当にいろんなことを思ってしまい、誰かに語らずにはいられないし、
逆に胸の一番奥深いところに隠しておきたくもなる物語でした。
美しくて痛い、誰もが知っているのに誰も答えを持っていない、
恋愛って本当に難しくてやっかいなものだとしみじみ感じてしまいました。

時系列をバラバラにした構成は本当に素晴らしく、
この演出こそがこの作品を複雑で重みのあるものにしていると思いました。
まさにトムのアタマの中を描いていると言えるバラバラさ加減。
こうしてランダムに描くことで彼がサマーとの関係を反芻する様を表している。
それはまるで人が何かを思い出す時の様子そのもので、そうやって思い出していくたびに、
甘い想いをもう一度感じたり、急に怒りがよみがえり溢れてきたりもして、
そうしてトムはサマーがどんな人だったのか、2人の500日間はどんな時間だったのかを知るのです。


(Day 290)
500days_of_summer_4.jpg


ああそれにしても、結果的に2人の恋愛に対する考え方は最後に逆転してしまうわけで、
いくらサマーの気持ちがわかると言っても、やはりトムはかわいそう、という結論になるかも知れません。
(あくまでトム目線で見たサマーですから、これをサマー目線で作り直したらまるで違う話になりそうですが。)
でもサマーに出会った経験は確実にトムを成長させ、本来の夢であった建築家への道に進ませることにもなった。
つらい恋の経験は誰でもすべきであり、決してしてソンなことなどない、ということだと思います。

サマーはズーイー・デシャネル以外考えられない、まさに彼女のために作られたかのような役。
彼女のちょっと世の中を斜めに見ているような表情が、サマーという人物を限りなく魅力的にしていました。
そしてジョセフ・ゴードン=レヴィットの素晴らしさと言ったら!
どちらかというと暗かったりアブナかったりする役が多く、素顔もかなり個性的な彼が、
どうしたらこんなにも"男の子"を演じられるのかというぐらい愛らしい。
仕草や表情のすべてが、ああ本当にサマーのことが好きで好きでしょうがないんだろうなという、
とにかく無敵で完璧な説得力でした。
サマーの最後の決定的な一言を聞いた時のあの表情・・・忘れられない!
2人をとりまく友人や同僚たちもみんな良かった。
それとクロエ・モレッツ演じるトムの妹レイチェルとトムのやりとりがまたとてもイイ!

音楽のことにもぜひ触れるべきなんですが、私はほとんど詳しくないので、
その辺は詳しい方にお任せして。私がザ・スミスについて何か言い出せば、
いよいよ話が長くなる上に感情的なことになってしまうので自粛!
とりあえずサントラ盤は必聴!早々に買って持っていたんですが、
観るまで聴かないでガマンしていたので、今は解禁してヘビーローテーション中。
映画のように、あのシーンこのシーンとランダムに思い出しています。
ああ本当に言い足りないことでいっぱい!上映館は少ないですが、ぜひ多くの人に観て欲しいです。
これを観て、うちのめされたり自分はここまでじゃないと安心してみたり、
そして運命と偶然の違いについて思いを巡らせ、
これからの恋愛や過去にした後悔に役立てて欲しいです。
次の幸せな出会いのために。あるいは今の幸せを大切にするために。


(500) Days of Summer(2009 アメリカ)
監督 マーク・ウェブ
出演 ジョセフ・ゴードン=レヴィット ズーイー・デシャネル ジェフリー・エアンド クロエ・モレッツ
   マシュー・グレイ・ガブラー クラーク・グレッグ レイチェル・ボストン ミンカ・ケリー



(500)日のサマー [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
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(500) Days of Summer

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2009/09/08
  • メディア: CD


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コメント 8

ジジョ

ライトな雰囲気なのに、
テーマは核心を突く様な鋭い映画でしたね☆
音楽もよかった〜♪
サマー目線の“(500)日のトム”とかあったら
おもしろそうですよね☆
by ジジョ (2010-01-18 13:54) 

dorothy

ジジョさん、こんにちは。
こんな身につまされる話も珍しいですよね。
軽いラブコメとか女の子向けに見られそうですが、もう全然!
特に男性にはキツイかも知れない。みんな観て打ち砕かれて欲しいですw
by dorothy (2010-01-19 23:39) 

いもり

初めまして!ジョセフ・ゴードン・レヴィット好きの方に会えてうれしいです。(500)日のサマー、DVDで今のところ二回見たのですが、身を切られるような映画ですよね。苦行かと思えるような笑。友人にピンとこなかったと言われ、これでピンとこないの!?と衝撃をくらっていたので、dorothyさんのボリュームのある感想が嬉しかったです。徹底的に残酷なのにそれを良い糧とできるラスト、どん底まで落ちた日々も最後に言葉を交わした後も、すべて含めての(500)日の恋に、じわりときました。
私は50/50を見てジョセフ・ゴードン・レヴィットにまいってしまったので、ここでオススメさせて頂きます。ダークナイト・ライジングのdorothyさんの感想もできれば読みたいです笑。
by いもり (2012-08-09 04:45) 

dorothy

いもりさん、はじめまして!
50/50の彼も良かったですね。いや実際のところ彼の作品はどれもこれも好きです。というか彼はどれも素晴らしい!(照)私のオススメはちょっと昔の作品になってしまいますが『BRICK』と『ルックアウト』です。あ、それともちろん『インセプション』も!
最近まったくブログ更新してなくて、でも常に更新しないととは思っているのですがどうもすっかり腰が重くなってしまって...。『ダークナイト・ライジング』の彼も素晴らしかったのでなんとか感想を書きたいのですが...がんばります!
よかったらまた遊びに来てください。

by dorothy (2012-08-09 10:00) 

エリアンダー

はじめまして、
いいレヴューですね。
サマーは自分に正直で好感が持てます。終章で「好きな男がいたのになぜボクと踊ったりしたの?」と訊かれて、
「踊りたかったから」とサマーらしい返事をします。これこそサマーなんですね。最後にトムに会いに来たのも、「会いたかったから」なんでしょう。おそらく何日もあのベンチに座り、トムを待ってたのです。サマーとの会話、切ないですね。でもトムはこれで吹っ切れて、オータムに会うことができたのです。やはり夏が終わらないと秋は来ないんです。肩を落として去っていくサマー(結婚生活に失望しているかのようにみえる)にトムが声をかけるシーンも好きです。「キミの幸せを祈っているよ」トム、どこまで優しいんだ、私にはとてもできない。(笑)

by エリアンダー (2012-09-13 13:39) 

dorothy

エリアンダーさん、はじめまして!素敵なコメントありがとうございます。
サマーが性悪だとかトムが情けないとかいろんな意見があるみたいですがそんな風にはとても思えないし、どちらにも欠点はあるかも知れないけど憎めないし2人をとてもキライになれません。
時々思い出して部分部分を観たりしてたんですがそういえば最近観てないなあ。コメントいただいてまた観たくなってしまいました。
よかったらまた遊びに来てください!(全然更新してませんがw)
by dorothy (2012-09-13 23:52) 

堀越ヨッシー

....うーむ、「ダークナイト・ライジング」のレビューはなんとか読めると楽しみにしていましたが、なんとなくこのままスルーされそうな予感。やはり「Looper」公開まで待たなきゃダメですか?。早くしないとブログ中断から1年以上経っちゃいますよ!(^皿^;)。
 
あと....この数ヶ月ずっと言いたかったことを告白しちゃいます。
「ツイッターの壁紙、最高ッ!」
タイラー・ダーデン兄貴は、永遠です(^口^)/。
 
「paranorman」を楽しみにしている今日この頃です♪
by 堀越ヨッシー (2012-10-03 08:14) 

dorothy

ヨッシーさん、たいへん、たいへんご無沙汰しております。
ここにコメントいただくとは思ってもみなかった...。
TDKRについてはもう更新できる自信はないです。Looperは来年なんですよね、それまでにはなんとかしたいとホントにホントに思ってるんですよ!いやもう完全にオオカミおばさんですけどね...(泣

タイラーダーデンの壁紙お褒めいただきありがとうございます。ブログ更新しないお詫びと言ってはナンですが、こちらの画像ですのでよかったらコピって持ってってください。

http://dorothy16.tumblr.com/post/2639109298/suicideblonde-fight-club

私のTumblr(http://dorothy16.tumblr.com/)にほかにもいくつかあるのでよかったらどうぞ。検索窓に「fight club」と入れていただくと引っかかります。

「Paranorman」観たいですよねー!!
by dorothy (2012-10-04 01:52) 

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