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イングロリアス・バスターズ [映画感想−あ]

久しぶりの100%タランティーノ映画は第二次大戦下のナチスを描くという、
戦争ものという新しいジャンルへの挑戦・・・と見せかけて、
リアルな史実の中にとんでもないイマジネーションを投下するという、
これはもう、彼にしか描けない世界。
もちろん、多少なりとも歴史的知識がないと理解出来ない部分は多いと思うし、
アタマ空っぽにして、というわけにはいきませんが、
それでも得意のこれでもかこれでもかのセリフの応酬、
来るぞ来るぞ・・・の残酷描写までの緊張感など、
始まってしまったら最後、タランティーノの世界に身を任せてしまうしかありません。


1941年、ナチス・ドイツ占領下のフランス。
ランダ大佐(クリストフ・ヴァルツ)は田舎のとある農家を訪れ、
この家に匿われていたユダヤ人一家を虐殺。
娘のショシャナ(メラニー・ロラン)だけがなんとかこの場を逃れます。
その同じ頃、アメリカ人のレイン中尉(ブラッド・ピット)率いる、
"イングロリアス・バスターズ"と呼ばれる連合軍特殊部隊は、
次々とナチス兵を血祭りにあげ、ドイツ軍に恐れられていました。
1944年、ショシャナは映画館主となり、あることがきっかけで、
ナチスのプロパガンダ映画のプレミア上映をこの映画館で行うことになります。
ショシャナはこの上映会で復讐を遂げる計画を考え、
そしてイングロリアス・バスターズもまたその劇場での殺戮作戦を練りますが・・・。


名誉なき野郎ども
inglouriousbasterds_1.jpg


ナチスという"絶対悪"を登場させ、しかしそれよりも最悪なバスターズの描写、
ショシャナは美しくか弱そうでありながら、相当に乱暴な復讐を計画する。
ほとんど善人なぞ登場せず、誰もがためらうことなく敵を殺す。
それが戦争というものの残酷なところ・・・とでも言いたいのか、
いや、これはいつものタランティーノらしいと言えるし、
でも、なんだかそれでいいのかな、という気もするのは、
100%フィクションではないというのが心のどこかで引っかかってしまうのかなと思いました。
別にヒトラーはじめ全部皆殺し!な展開をどうこう言うつもりはないですが・・・。

今回も映画愛に溢れたオマージュやら引用やらで溢れているらしく、
詳しくない私にとってはわかる部分も限られますが、
わかる人にはたまらない世界だろうなという想像はつきます。
では、そんな知識がなくとも楽しめるか・・・というとよくわからない。
もっともタランティーノ作品は昔から好きな人にはたまらなく愛すべき作品ばかりだし、
好きじゃない(という人はあまり知らないのですが)人は最初から相手にもしてない気がする。
私は話の運び方や音楽やキャスティング、延々と続く無駄話、
そしてその先に訪れる残酷で無情な殺し合いなどは、
(それが私のよく知らない引用で構成されているものだとしても)
タランティーノの世界として確立していて唯一無二なものだと思うし、
その圧倒的な作品の持つ力は認めざるを得ないというか・・・単純に素晴らしいと思います。
そういう意味では、これは驚くほど完璧に、かつこれまで以上に完成された、
タランティーノ作品の素晴らしい進化形、完成型となったなと思いました。


ユダヤハンター
inglouriousbasterds_2.jpg


時間軸の前後などはほとんどありませんが、いくつかの物語が同時進行で語られ、
それでもチャプター分けされているのでかなりわかりやすい親切設計。
その中でも第四章の地下の居酒屋シーンでの、緊張感とユーモア、映画的小ネタ、
そして予想通り壮絶な銃撃戦になだれ込んで行くあたりは見応えがあり面白かったです。
でもアタマの皮剥ぎとか銃弾のグリグリ押しなんていうのは生理的に受け付けず、
『レザボアドッグス』の耳削ぎシーン以来、タランティーノ作品を観る時は、
必要以上の緊張感・・・今度はどんなイタいシーンが!?を強いられ、
そしてそれらは二度と観たくないシーンとして、ビデオ鑑賞の際は早送り必至。
そういう苦手なイタさと闘いながらの鑑賞が楽しいのかというととても微妙で難しいところです。
ホント、これを普通に「ブラピの新作!」として普通にデートなんかで観ちゃいけないと思うし、
(そんな人はいない?いやいるでしょう。)
これ観ると『バーン・アフター・リーディング』でのブラピの扱いなんてまるっきり可愛らしい。
こっちのブラピの「ボンジョルノ!」のほうが断然バカ度は高いです。

そう、今回は意外に笑える要素は少なく、
荒唐無稽であり殺し合い方も相当バカそうでありながら、
何か深刻さというか、底辺に暗さのようなものがずっと潜んでいる気がしました。
遊びや感情的なものを廃して、いかに敵を殺すかに誰もが執心し、
そして殺しは実行されながらも思惑はどれも少しずつずれていくという、
虚しさから来る暗さのようなものも感じられました。
この暗さや深刻さにはもしかして私の気付かないことや、
あるいはよくわからない理由やこだわりもあるのかも知れません。
もしかしてここでまた映画的知識の必要性もあるのかも、なんて思い始めると、
結果的に作品鑑賞においてのハードルがまた上がってしまうような気もするし、
なんだか単純に笑って観ていられるような描写をもう少し入れて欲しかった気もします。
まあナチスを描くのに単純なバカ騒ぎばかりもしてられないかもですが。
でもタランティーノ作品って昔はもっと単純にスカッと、
「面白かった〜!」って感じじゃなかったでしょうか?
まあ彼もいつまでもそんなばかりじゃない、ということかも知れませんが。


復讐に燃える
inglouriousbasterds_3.jpg


今作でカンヌ映画祭最優秀男優賞を受賞した、
ランダ大佐役クリストフ・ヴァルツがとにかく素晴らしい。
ちょっとジェームズ・ウッズをあっさりさせたような風貌(違う?)、
その完璧にイヤったらしい悪役ぶりはたまらないものがあります。
ショシャナ役のメラニー・ロランの美しさ、力強さもただごとじゃない。
はっきり言って今作でブラッド・ピットは主役じゃないです。
でもあの役をほかの誰でもなく彼が演じることがポイントなのだとは思いました。
バカで田舎モノで残酷で・・・ってものすごく適役ですもん。もちろんいい意味で。
スパイ女優役のダイアン・クルーガー、冒頭で登場する農夫役のデニス・メノシェ、
一見好青年のナチスの英雄ダニエル・ブリュール、
どれもこれもどうしてこんなにトホホな顔ばかり集めたの?のバスターズの面々・・・と、
とにかくキャストが誰も彼も素晴らしい。
よくこういう魅力的な俳優たちを各国から集めて来たものだと思います。
バスターズの中で特に印象的な"ユダヤの熊"ドニー役のイーライ・ロスは、
その濃い顔つきもうまく味となっていて良かったんですが、
この役は当初、アダム・サンドラーが演じるはずだったとか。
うーん、サンドラーがバットでボコボコするのはものすごく観たかった!
ブラピとのツーショットも観たかった!ちょっと残念。

褒めてるんだか貶してるんだかわからない感想になってしまいましたが、
要するにいろんなことを語りたい、考えたいと思わせるのは、
タランティーノ作品の特徴だと思うし、私がいつも受ける感想です。
こういうのはやはり誰にも真似出来ない、この力強さには本当に圧倒されるし、
手放しで最高!とは言えないし言いたくなかったりもするのだけれど、
映画の面白さという点では、やはりこれ以上のモノはそうそうないと思います。


女優はミスを犯す
inglouriousbasterds_4.jpg


最後にもうひとつ。Twitterでの大森望さんの発言をここに再掲。

 イングロは途中まで面白いけど、映画でナチと戦う話かと思ったら、
 フィルムを××してあんなすばらしい映画館を××する時点で台なし。
 というか映画の敵だろ! QT許せん! と思いました。


コレすっごく思った!映画愛に溢れてるとかいうことだったのに・・・と。
可燃性フィルムの話は映画をネタにした映画や小説なんかではよく登場するけれど、
その都度その怖さと、意識的に燃やすことのもったいなさを感じてしまいます。
何かどこか引っかかってスッキリしないのは、実はこの部分だったりして?


Inglourious Basterds(2009 アメリカ/ドイツ)
監督 クエンティン・タランティーノ
出演 ブラッド・ピット メラニー・ロラン クリストフ・ヴァルツ イーライ・ロス
   ミヒャエル・ファスベンダー ダイアン・クルーガー ダニエル・ブリュール
   ティル・シュヴァイガー ジャッキー・イド B・J・ノヴァック オマー・ドゥーム
   マイク・マイヤーズ ジュリー・ドレフュス ロッド・テイラー



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コメント 4

ジジョ

こんにちは☆
良いも悪いも、なんだかいろいろ言いたくなっちゃうのは、
やっぱりタラの映画は個性的ってことなんでしょうね〜。
余談ですが、私は「バーンアフター〜」のブラピ大好きです。
こういう役、もっとやればいいのにw
by ジジョ (2009-11-30 04:57) 

dorothy

ジジョさん、こんにちは。
今読み返しても、ワタシ何言ってんだかな文章になっててちょっと恥ずかしいです。
私もブラッド・ピットは男前な役よりこういう方向がスキですね。
でも今回は見ててブラピ年取ったなあとしみじみ思いました。
by dorothy (2009-12-01 03:47) 

ぷーちゃん

こんにちは。
タランティーノ作品では、ジャッキー・ブラウンやパルプ・
フィクションにはまりました。(^ー^* )
by ぷーちゃん (2009-12-01 08:47) 

dorothy

ぷーちゃんさん、こんにちは。
私も一番は『パルプ・フィクション』かな。
TVでやってるとつい見入ってしまうんで、もう何回観てるんだかというカンジです。
by dorothy (2009-12-03 03:31) 

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