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こわれゆく世界の中で [映画感想−か]

今年3月に急逝したアンソニー・ミンゲラ監督。
彼の最後の映画作品です。


ロンドンのキングス・クロス地区。
この地域の再開発のため、ここにオフィスを構えた建築家のウィル(ジュード・ロウ)。
彼は長年、スウェーデン系アメリカ人の映像作家リヴ(ロビン・ライト・ペン)と、
正式に結婚しないまま一緒に暮らしていますが、
このところ、彼女の自閉症気味の娘ビーのことで関係がうまくいかなくなっています。
そんな時、彼のこの新しいオフィスに2度も強盗が入ります。
仕方なく共同経営者のサンディ(マーティン・フリーマン)とともにオフィスの見張りをすることに。
そこに再び現れた窃盗団の一味の少年ミロ(ラフィ・ガヴロン)の跡を追い、自宅を突きとめたウィルは、
ミロの母親であるボスニア難民のアミラ(ジュリエット・ビノシュ)と出会うことになります。
仕立屋であるアミラの客を装い、何度もこの家を訪れるうちに、
ウィルはアミラに惹かれ始めます。


愛を求めた2人
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原題『Breaking and Entering』の意味は"不法侵入"です。
壊して、入る。確かにこの作品に於いてこの言葉はキーワードだったように思いました。
窃盗団の少年たちはまさにウィルのオフィスに不法侵入するわけですが、
この地区で生まれたというブルーノ刑事(レイ・ウィンストン)は、
こんな場所にオフィスを構えるほうが悪いと言い、捜査に非協力的な上、
この再開発自体になんとなく皮肉を込めた口調だったりします。
ウィルの"話し相手"になる売春婦オアーナ(ヴェラ・ファーミガ)は、
「壊して浄化すればいい。私たちはよそに移るだけ」と手厳しい。
地元住民にしてみれば、まず壊すことから始める都市開発もまた、
ある種の不法侵入と受け止められるのかも知れません。
そして、事件をきっかけに出会うことになるウィルとアミラ。
難民として苦労してきたアミラの固く閉ざされていた心をウィルは砕き、入り込んでしまうことになります。

一方、長年一緒に暮らしているウィルとリヴ。
映画の冒頭から、ウィルが運転する車内で会話もなく、
視線が決して重ならないという2人の様子で、
ウィルとリヴの関係が冷めかけていることが表されます。
リヴは娘ビーの状況に悩み、そのことでウィルに遠慮もあって結婚に踏み出せないでいます。
ウィルはウィルで、彼なりにビーを愛しているけれど、
ビーはなかなか心を開いてはくれないし、母と娘の輪の中に入って行くこともできません。
こんなに近くにいるのに、互いの気持ちは行き違ってしまうばかり。
できてしまった見えない壁を壊すことができず、
その結果、ウィルは他に愛を求めてしまうことになるのです。


母と息子の絆
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長く一緒に暮らしていても、できてしまった壁はどうすることもできず、
壁を避けて遠回りすれば、互いに違う方向に進んでしまう。
ウィルとリヴのカップルを見ていると、人が誰かと共に暮らすことの難しさ、
長く一緒にいることでできる壁ほど壊しにくいものだということがわかります。
結局2人は、不意に現れたアミラという第三者の存在によって思わぬ形で壁を壊すことになります。
そう、ウィルとアミラの不倫関係がこの作品でのメインの話だと思っていたら、
話はウィルとリヴのほうに戻ることになるのです。
一連の事件、出来事の決着の付け方は出来過ぎな気がしないでもないですが、
とりあえずそれぞれが良い形に収まり、それでもウィルとリヴの間にできた壁は壊されることはなく、
2人の視線は互いに違う方向を向いたまま・・・で終わるのかと思ったら、そう終わらない。
そう、壊さなくてはいけないのです。
相手に壁を壊す勇気がないのなら、自分から壊すしかない。
相手がその壁を檻だと言うのなら、それは取り払わなくてはいけない。

ラストのこの最後の一押しには、不意を突かれ、ググッとやられてしまいました。
きっとウィルはずっと愛が見つけられないままで終わるのだと思っていたのです。
これでいい。これでいいはずです。昨日今日出会った2人じゃないのだから。


本当に理解し合えるのか
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不満な点をいくつか。
ウィルがアミラに惹かれるというのがどうも唐突な感じがしました。
というか、これを言ったら実も蓋もないのですが、何故ジュリエット・ビノシュ!?
ここは映画的に、もうちょっと若くて幸薄そうな女優さんに演じて欲しかった気がします。
それともウィルが外に求めた愛は母のような愛だったということなんでしょうか?
逆に、アミラが息子を守るためにウィルを誘惑したというのなら納得いく気もするのですが・・・。
もう少し、何かウィルがアミラに惹かれる強いきっかけのようなものが見えて欲しかった。
ただ、彼女が息子に示す愛情、息子と一緒にいるときの快活な雰囲気はとても魅力的だし、
彼女の疲れ果てた表情だけで、これまでの苦労がすべて見えてしまいそうなほど。
そこに深いシンパシーを感じたということなのかも知れません。
それにしてもジュリエット・ビノシュは上手すぎます。
彼女の東欧訛りの英語がどれぐらい本物に近いのかわかりませんが・・・たぶん完璧なんでしょうね。
頭が下がります。

それから、最初のほうで登場する売春婦オアーナが、
前半のみでいなくなってしまうのも、ちょっと謎で残念でした。
ウィルがこのオアーナの誘惑には一切乗らないのが面白く、
彼女にリヴと同じ香水をプレゼントするというのも、ウィルの人間性がよく表れていると思いました。
カラダの関係はなくとも、ウィルはオアーナに充分癒されていたのですよね。

ジュード・ロウはこういう優柔不断な男はぴったり合ってます。
今回その美貌がイヤミになっていないのも大したものです。
ロビン・ライト・ペンは大好きな女優さん。
ほぼスッピンで小じわも丸わかりで、どうしようもない現実に疲れ果てた雰囲気をよく出していました。
それと、世間的評価は低いですが個人的に大好きな『銀河ヒッチハイク・ガイド』(!)の、
マーティン・フリーマンがいつも通りのいい味を出してくれていてウレシカッタ。

アンソニー・ミンゲラの演出はまったく無駄がなく、美しい映像、美しい音楽も完璧。
今作は彼自身のペンによるもので、今のロンドンが抱える人種問題や再開発など、
たくさんの要素が詰め込まれていて、それらを完璧に理解できない自分の勉強不足、
知識の足りなさ加減がちょっと悲しくなってしまいました。
でも何が悲しいって、こんなに素晴らしい監督の作品をもう観ることができないことですね。


Breaking and Entering(2003 イギリス/アメリカ)
監督 アンソニー・ミンゲラ
出演 ジュード・ロウ ジュリエット・ビノシュ ロビン・ライト・ペン
   ヴェラ・ファーミガ マーティン・フリーマン レイ・ウィンストン



こわれゆく世界の中で

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  • 出版社/メーカー: ウォルトディズニースタジオホームエンターテイメント
  • メディア: DVD



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