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アメリカン・スプレンダー [映画感想−あ]

クリーブランドの病院で書類整理係として働くハービー・ピーカー。
妻は家を出、体調もすぐれず、単調な仕事をこなすだけの日々。
ある日、そんな自分の日常をコミックにすることを思いつきます。
アイデアを書き留め、友人のロバート・クラムに作画を頼み、
コミック誌『アメリカン・スプレンダー』を創刊します。
それは予想以上に評判となりますが、依然として彼の病院勤めは続き、
生活は特に変わることはありません。
しかしそんな彼の元に、コミックのファンだという、
ジョイス・ブラブナーという女性から1通の手紙が届きます。


ハービーとジョイス
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実際にアメリカでカルト的人気のコミック『アメリカン・スプレンダー』。
その原作者であるハービー・ピーカーの"半生"を描いた作品。
本物のハービーがナレーションを務め、実際に画面上にも登場します。
そしてポール・ジアマッティ扮するハービーと、
コミックのハービーの3人が交互に現れる不思議な構造。
ポール・ジアマッティは本人の特徴をよく捉えていて、
けれど無理に本人に似せようとしている風でもなく、実に自然にハービーを演じています。
途中で本人に入れ替わったりするシーンもあるのですが、まったく違和感がありません。
その上、コミックの枠線の中を歩き、
彼の頭の中の声として、コミックの絵のハービーが語りかけたりと、
かなり複雑なことになっているのに、不思議に調和した独特の世界が形成されています。

ハービーは常にいろんなことに不満を持っていて、ほとんど笑顔を見せることがありません。
ままならない日々に、そうなってしまうのは仕方がないことだと思いますが、
それでも職場には気の合う(?)友人もいるし、
偶然に知り合ったロバート・クラムの存在も大きい。
3番目の妻となるジョイスとの出会いも、見ようによってはドラマチックと言えなくもないです。
そんな風に周りの人に恵まれていたこともあって、彼の成功はあったのだと思いますが、
ハービー本人はそれでも、ずっと満たされない思いで暮らし続けます。
そこからいろんなことがあって、こうやって自分の半生が映画化されるまでになり、
今は落ち着いた日々を送っているのかも知れませんが、
それでも、ずっと不満を持ったままでいた可能性もある。
人ってこんな風に、ちょっとした何かで人生を変えることができるのだな、
なんてことを考えたりしました。


本物のハービーとジョイス
americansplendor_2_2.jpg


とは言っても、これは1人の男の成功物語とかいったようなものでは決してありません。
映画などを通してアメリカを見ていると、アメリカ人という人たちは、
誰でもがポジティブだったり、成功を夢見ていたり、強く自己主張して生きているような気がしてしまいます。
そんな人々が大勢暮らす国だと思いがちですが、
でも、そんなことは当然なくて、ほとんどの人は地方でつましい生活を送っている。
そんな生活に慣れてしまっている人、諦めている人、ハービーのように不満を持ちながら生きる人などが、
大半を占めているのだと思います。
ハービーがどれほどの成功を収めたのか、実際の彼のことを何も知らないので、
劇中や、DVDの特典映像などに登場する彼を見て判断するしかないのですが、
今でも特に変わった様子は見えません。
急にセレブリティ然となることもなく、相変わらずヨレッとした身なりだし、
こう言ってはなんですが、いわゆるルーザーな雰囲気を今でも持ち続けています。
妻のジョイスも同じく。
リアルタイムで自分たちの半生を綴った映画が作られることが、
恥ずかしくもなさそうだし、かといって得意げにも見えない。
そんなところも、実に"ちょっと変わった人たち"なんだろうなあと思わせます。
まあそもそも、自分や自分の周囲をネタにコミックにしていた人なのだから、
そういうことにあまり執着しない人たちなんだろうな、と思いますが。

そんな不思議な人たちの話なので、面白くないわけはない。
でも、爆笑したりとか、いろんな事件が次から次へと・・・ということはありません。
特別な出来事や、感動的なエピソードはほとんどないと言っていい。
ハービーがコミックを書くことを思いついたきっかけが、
たまたま窓の外を歩いていた人たちの会話だったりというように、
ちょっと耳を澄ませば、心を止めれば、周りには面白いことがたくさん転がっている。
そこに気がついたという点で、ハービーには人とは違う才能があったということなのでしょう。


同僚たちもコミックに登場する
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ジョイス役のホープ・デイヴィスも、不思議と本人によく似ています。
似ていることを前提でキャスティングしたのでは?と思うぐらい。
そして彼ら以外のキャストもなかなか興味深く、
特に、同僚であるトビーが強烈です。
"完璧なオタク"というより、少しアタマが弱い人なのでは?と思わせる言動なのですが、
このトビーも本人が劇中に登場し、そしてそれが過剰な演技でないことがわかります。
本当に、そのまんまのしゃべり方!
演じるジュダ・フリードランダーって誰だ?と思ったら、
『ズーランダー』のまったくセリフのなかった弟だ!
彼とポール、そして本物のハービーとトビーが1つの画面に現れるシーンがあるのですが、
本物2人の会話を後ろで聞いてる役者2人の表情が微妙で面白い。
一番不思議な空気が流れているシーンです。

平凡な日常の見方をほんのちょっと変えてみる。
ちょっとだけ耳を澄ましてみる。
それでほんのちょっとだけ幸せがやってくるんだな、ということを、
ユルーい語り口で綴った不思議な傑作。
でも決して、勇気づけられるとか、明日に希望が持てるとか、
そういうことは期待しないで観て欲しいです。


American Splendor(2003 アメリカ)
監督 シャリ・スプリンガー・バーマン ロバート・プルチーニ
出演 ポール・ジアマッティ ホープ・デイヴィス ジェームズ・アーバニアク ジュダ・フリードランダー
   ハービー・ピーカー ジョイス・ブラブナー アール・ビリングズ マデリン・スウィーテン



アメリカン・スプレンダー

アメリカン・スプレンダー

  • 出版社/メーカー: アミューズソフトエンタテインメント
  • メディア: DVD



タグ:映画
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