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幸福 [映画感想−さ]

22日日曜日の夜、唐突に(私が気がついてなかっただけですが)、
NHKハイビジョンで、アニエス・ヴァルダの『幸福(しあわせ)』が放送されるというので、
慌てて録画セット。早速観ました。


森の中でピクニックする4人家族。
フランソワとテレーズ、そして2人の幼い子どもたち。
仕事にも、家族や友人にも恵まれ、まさに幸福を絵に描いたような毎日を過ごしています。
ある日、フランソワは郵便局で働くエミリと出会い、彼女を愛し始めます。
しかし彼に罪悪感などなく、同時に妻も愛し続け、
その結果、これまで以上に幸福感に満たされるのでした。


夫婦
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冒頭の森の中のシーンは、咲き乱れるひまわりに柔らかな日差しが優しく美しい。
モーツァルトが流れる中、幸せな家族のピクニックシーンはまるでルノワールのよう・・・と思っていたら、
街に帰ってきて、叔父夫婦の家を訪ねたときにテレビに映し出されているのは、
ルノワールの『草の上の昼食』という、こちらをニヤリとさせてくれる演出。
(といってもこれは、その昔、背伸びして読んだヌーベルヴァーグ関係の本などで仕入れていたトリヴィアですが。)
森の中とは対照的に街中は鮮やかな色づかいが美しく、大胆な構図、短く差し込まれるカットなどは斬新で、
久々にヌーベルヴァーグ堪能してるなあ、なんて思いながら観ていました。

しかし、話は奇妙で残酷な方向へ進んでいきます。
普通に考えて、夫に愛人ができ、妻がそのことを知る。
それはたぶん、どんな場合でも不幸の始まりであるはずなのです。
ですが、この夫フランソワは違います。
愛がもう1つ増えたと言って、今まで以上に幸せであると感じるのです。
これには、なんだか居心地の悪い不思議な気分にさせられました。

同時に2人の人を愛せるのか。私には経験もなく理解できません。
仮に愛せたとしても、そこに不都合が起こらないわけがないとも思います。
それは純粋に人を愛する気持ちとは別の、世間体とか、相手がどう思うかといったことで、
そこに思いが至らなければ、本人にとっては確かに"愛が増える"わけだし、
誰よりも幸せなのかも知れません。

彼は、自分は正直でウソをつかないと言います。
それは悪いことではないかも知れないけれど、それで周りが幸せになれるはずはない。
彼自身にとってだけ正しいことでしかないのです。
まったくの自己満足、自己完結です。
しかし、これまた彼にとって幸せなことと言えるかも知れませんが、
妻テレーズも、愛人エミリも、彼を無条件に愛すると言うのです。
「あなたがいいのなら、それで私も幸せ」と。


夫と愛人
le_bonheur_2_1.jpg


この後、明らかに不幸な出来事が起こるわけですが、
フランソワがそれをどのように受け止めたのか、どう理解したのかというのがハッキリしません。
その後の展開を見れば、彼は最初から最後まで幸せであり続けたと言えます。
フランソワを純粋無垢な存在であると言うのはちょっと違うと思いますが、
彼の一貫した姿勢は、人が幸せに生きるということはどういうことなのかという、
ひとつの答えなのかも、という気もしました。
幸福というのは、物事を本人がどう受け止めるのか、考え方ひとつなんだということです。
彼がそうすることによって、例えば幼い子どもたちもおそらく幸福でいられる。
家族というのは、ひとつの幸せの完成型であるわけで、
そのことが、オープニングとエンディングに現れる家族4人の姿で表現されているように思います。
その中身や形が微妙に変わっていたとしても、です。

けれど、幸福というものはフランソワのように確固たるものではなく、
微妙で危ういものだと思うし、だからこそ得難く、大切にすべきことだと思うのです。
この作品で描かれた幸福は偶然でしかありえないし、不幸の影もきちんと持ち合わせています。
それを意識するかしないかは本人たち次第で、この幸せがすべての人に当てはまることではありません。
また、こうなりたいとも思わない。
残酷だと言ったのはそういう気持ちからで、何が幸福か何が不幸かは、
微妙なバランスの上に立ち、且つ当人がどう思うかによって形や方向が変わっていくものだということ。
そんなことを考えました。


家族のかたち
le_bonheur_3_1.jpg


印象的なセリフがいくつもあるのですが、
わかりやすく(!?)面白いなあと思ったのは、
フランソワがエミリに「妻は植物で君は自由な動物だ。僕は両方愛する」というセリフ。
浮気をすること、夫や妻がいる人を愛することは、確かに珍しいことではありません。
まあ、そういうことなんだろうなあとヘンに納得。

フランソワ役のジャン=クロード・ドルオ、そしてテレーズ役のクレール・ドルオは、
その名前からわかるように実際に夫婦で、そして2人の子どもたちも本当の子どもたちだそうです。
どおりで、やっと歩き始めたぐらいの幼子たちの姿が自然なはずです。
子どもたちは成長してこの作品を観たとき、何を思ったでしょう?複雑な思いがあったのではないでしょうか。


Le Bonheur(1964 フランス)
監督 アニエス・ヴァルダ
出演 ジャン=クロード・ドルオ クレール・ドルオ マリー=フランス・ボワイエ
   オリヴィエ・ドルオ サンドリーヌ・ドルオ ポール・ヴェキアリ



幸福

幸福

  • 出版社/メーカー: アイ・ヴィ・シー
  • メディア: DVD



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